教育福島0186号(1995年(H07)04月)-034page
養護教育センター通信
養護教育における教材・教具の工夫と活用に関する研究(第1年次)
教材・教具活用の視点と方法
一、はじめに
現代の情報化社会における学校教育の当面する課題は数多くあり、その解決を図る一つの視点として、教材・教具の工夫と活用が、今大きな注目を浴びています。
養護教育においても、特に、児童生徒の障害が多様化している今日、一人一人の発達を促す教育活動に教材・教具の果たす役割はきわめて大きなものがあります。
そこで、当センターでは、平成六年度から三か年計画で、養護教育における教材・教具の開発・活用の基本的なねらいと利点を明確にしながら、各障害に即した自作教材・教具の開発・活用・整備・流通のあり方を探ることにしました。
本号から二回にわたり、平成六年度に行われた研究の概要について述べていきます。
二、養護教育における教材・教具開発・活用の基本的な考え方
1 教材・教具とは
当養護教育センターの昭和六十一・六十二年度の研究では、「教材・教具とは、それを使えばいつでも学習が成立するものと決まっているわけではない。ある教材・教具素材が生き生きとした活動の促進、展開に深くかかわり、その活動が子どもにとって調整度のより高いものになったとき、その教材・教具素材が初めて教材・教具として位置付けられる。」と定義しています。本研究も、この立場を受け継いで研究を進めました。
なお、教材・教具と一口に言いますが、厳密に言えば、教材と教具は本来別のものです。一般に、教材は、学習指導の目標や内容に即して作成された資料であるのに対し、教具はこうした教材を学習させるために利用する手段を言います。しかし、具体的な教育実践の場においては、この両者はなかなか分けることができないので、本研究では、教材・教具をひとまとめにして取り扱うことにしました。
2 「自作教材・教具」とは
本研究を進めるに当たっては、特に養護教育の特性と個性重視という立場から、自作教材・教具を重視し、「自作教材・教具」を表1のようにとらえることにしました。
3 自作教材・教具開発の重要性
表1「自作教材・教具」の定義
a.オリジナル:児童生徒の心身の障害の状態等を考慮して独自に創意工夫した教材・
教具
b.改造(改良):既製のものに改良を加えて活用した教材・教具
c.使用目的の転用:既製のものを組み合わせて使ったり、他の目的のために利用したりした教材・教具
d.その他:上記a.b.c.以外の教材・教具
※コンピュータに関して
障害にあった入力機器の開発・改良をした場合等、教材・教具としてのコンピュータ活用であれば、ハード、ソフトも自作教材・教具と考える。