教育福島0187号(1995年(H07)06月)-028page

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った。

あの森鴎外が、自分の子どもにこんなことを言った、と聞いたことがある。「どんなにめんどうなこと、こみ入ったことでもあわててはいけない。一つ一つ片づけていけば、必ず解きほぐせる。縫糸がめちゃめちゃにこんがらかっている時も、あちらこちらからやたらに引っぱったりしてはだめで、はしの方から一つ一つほぐしていけばいい。」

こういう場合、たいていはあせって、あるいは興奮して、わけもわからず手をつけて、かえって、いっそう解決を難しくしてしまう。

「忙しい」「大変だ」

最近、よくこんな言葉を口にしているような気がする。自分のやるべきことが、目の前に広がっている今だからこそ、あの時の初老彫刻家の言葉が沁みてくる。

「Festina lente」(ゆっくり急げ)

何をあせっているんだよ。時間は限られているのだから、とにかく一つ一つ着実に処理していくこと。これが一番の早道だよ。

そんな心の声が聞こえてくる。

近いうちに、あの「長崎アトリエ村」を、また訪ねてみようと思う。

(郡山市立郡山第二中学校教諭)

 

「頼もしき国際人」の引率

千葉克裕

 

ルと呼ばれる進学校で、前首相サッチャー女史の母校としても有名な学校です。

 

昨年七月に本校の国際交流事業の一環として英国の姉妹校、グランサム女子高校への交流派遣の引率の機会を得ました。この学校はグラマースクールと呼ばれる進学校で、前首相サッチャー女史の母校としても有名な学校です。

ほとんどの生徒にとって今回の訪英が初めての海外旅行であり、その興奮と不安の大きさは容易に推察できるところでした。私自身外国生活の経験はありましたが、渡英は初めてであり多少の緊張と不安がありました。生徒には「パスポー卜の取得方法」から何事も極力自主的にさせようとの方針で進めましたが、事前研修も回を重ねるごとに生徒への不安はつのるばかりでした。

ロンドン滞在、ホームステイと瞬く間の二週間が過ぎ去りました。彼らの年齢では、初めて異文化の中に放り込まれて「興奮するな」というのが無理なことでした。グランサム滞在中には、「受け入れてくださっている関係者に対しての感謝と心配りを忘れない」、またロンドンでは「自分の身は自分で守る」、「集団行動でのルールをきちんと守る」など、何度かくどいまでに注意したこともありました。今にして思えば、海外引率という重責から彼らに対し、過剰な期待と不安があったのかもしれません。予期していたとおり多少のハプニングもありましたが、彼らは私の予想を越えて実にのびのびと行動しだしました。

ホームステイ先では辞書を片手に文化の壁を乗り越え、さらに日本文化を伝えることにも全力を注ぎました。ロンドン市内やオックスフォードの研修では、物怖じせずに自分たちだけで行動しました。私自身の海外体験と比較してみても、彼らの大胆さは驚くべきで、そのたくましさの中に彼らの「国際人」としての未来を見る思いがしました。

約二週間という限られた時間と一言葉の壁という二つの障害の中で彼らが英語という言葉を通して伝えたり受け取ったものは非常にわずかであったかもしれません。しかし、心で伝え、身をもって体験してきたことの大きさは量り知ることのできないものがあったと確信しています。

「国際化教育」がさけばれる今日、私たちはその「定義」を教えることのみにとらわれてきたように思います。彼らには「国際化」の定義など微塵も必要はないのです。彼らの中には「異文化に対して素直に心の扉を開く」という「国際人としての資質」がすでに備わっていることを実感しました。

今後、教育の場に要求されることは、発信すべき自己の文化に対する理解を深め、様々な文化を受けとめ、理解しようとする態度を育んでいくための機会や環境づくりを急ぐことにあるのではないかと考えています。

(県立福島南高等学校教諭)

 

ティームティーチング

佐野常浩

 

「これから生活科の学習を始めま

 

「これから生活科の学習を始めま

 

 

 


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