教育福島0187号(1995年(H07)06月)-031page
三 個性を伸ばす総合学科
人生八十年時代を迎え、また、今日の社会のように技術革新の進展等に伴い、産業・就業構造が大きく変化している時代にあっては、将来の進路について明白な展望を見定めることが難しいなどの理由から、若者の職業選択についても先送りされる傾向が目立ってきています。
こうした社会情勢のもとでは、中学卒業時に将来の進路について一部の生徒が明確な進路を持たないことを、自己の進路に対する意識が希薄であるとして、一概に否定的にとらえるのではなく、高等学校における様々な学習を通して、自己の能力や適性を見いだしていこうとする積極的な契機としてとらえることも必要です。このような観点から、総合学科への進学を希望する生徒像としては、
1) 多様な教科・科目の中から、自己の興味・関心に基づき、主体的に履修する科目を選択するという総合学科の教育課程の特色に魅力を感じる生徒
2) 高等学校卒業後は大学等に進学したいと考えているが、普通科目一辺倒でなく、幅広い分野の学習を通して、自己の能力・適性に合った分野を見いだしたいと考えている生徒、進学向けの勉強と平行して、興味・関心のある情報や福祉などの学習もしてみたいと考えている生徒
3) 高等学校卒業後は就職を希望しているが、中学卒業の段階では様々な分野に魅力を感じるため、幅広い分野の学習を通して、その中から自己の能力・適性等に合った分野を見いだしたいと考えている生徒
4) 高等学校卒業後は就職するか進学するかまだ決まっていないため、様々な分野を学習した上で、将来の進路をより適切に決定しようと考えている生徒
等が考えられます。
四 一学級三十二人編制の教室
新設される総合学科のために校舎も新築されます。日本大学助教授兼教育環境研究所所長・長澤悟氏により監修された校舎は、新しいタイプの高等学校にふさわしく、これまでのイメージにとらわれない清新な形態と機能的でゆとりある空間が演出されています。その特徴のいくつかを紹介します。
1) 少人数HRの編制
総合学科で多様な選択講座を柔軟に設定するには、講義室の大きさの多様性と数を確保する必要があります。必修科目の多い一年次の生徒の教室は、従来どおり四十人の学級編制の教室としますが、選択科目の多い二年次以降については、一学級を三十二名の学級編制とする中教室とし、学習の効率化を図るようにしました。
2) 多種多様な教室サイズの編成
単位制においては、選択講座の受講者数は十人未満、十人台、二十人台、三十人台、四十人以上と多岐にわたることが予想されます。そのため、前述の三十二人対応の中教室や二十人程度でゼミ形式の授業を行うことができる小教室、さらには二クラス分以上の生徒を収容できる大講義室まで設置されています。
また、教室の間仕切りを移動することによって小教室と中教室をあわせて大教室とする等の工夫もなされています。
3) 教科教室型運営方式の採用
必修科目の多い一年次では、生徒の教室を固定し、教員が移動して授業を行う従来の運営方式を採る一方、選択制が全面的に展開され、教室移動が前提となる二年次以降では、教科学習の充実が図りやすい教科教室型運営方式を採用しています。これは本県では初の試みで、各教科ブロックの配置は系列関連の実習室等との関係を考慮して、例えば、LL教室に並ぶ教室は英語、コンピュータ教室付近は数学、また、図書館に隣接した付近を国語や社会のブロックとして位置付けました。各ブロックには、教科の教員数に応じた教科研究室、ゼミ対応教室を配置しています。
矢吹高等学校校舎新築完成予想図(手前が新築校舎)