教育福島0187号(1995年(H07)06月)-036page

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また、意図的に友達とものの受け渡しをさせたり、一緒に鉢カバーを先生方に配らせるなど、友達とのつながりを持たせるための活動も取り入れました。友達の声かけを受けながら、ニコニコと活動する様子が見られるようになりました。

2 養護・訓練(個別学習)

ここでは、主に運動・動作面での課題に取り組みました。

1) あぐら座

あぐら座になると、左股関節の脱臼があるため、重心が左に偏って、骨盤が左側にねじれてしまいます。また、強い側弯が見られ、肩にも緊張が入っています。それが体の成長とともに強くなってきたように思われます。そこで、できるだけ骨盤のねじれを少なくした状態で上体を自分で起こすことができれば、あぐら座やいす座、車いすでの姿勢も改善されるのではないかと考えました。

まず、骨盤のねじれを自分で修正させようとしましたが難しく、仰向けの姿勢での股関節まわりのリラクゼイションから行うことにしました。T君がこわがる課題でもあり、ゆっくり本人のペースに合わせるようにしました。かなりの期間を要しましたが、徐々に自分でスムーズに力を抜くことができるようになりました。

次に、背をゆるめる学習ですが、かなり緊張が強いので、始めは寝た姿勢から、徐々にあぐら座の姿勢に近づけていきました。寝た姿勢では、教師に体をまかせて、緊張を抜けるようになりましたが、起こした姿勢では、特に肩周辺の緊張を抜くことが最後まで課題として残りました。

あぐら座で腰や背中を自分で起こす動きが、次第にはっきりしてきましたが、首を起こすことは、肩周辺を自分で動かすことができないため困難な課題でした。

2) いす座(背もたれなし)

一年生のときは、いすの縁を手でつかんでいて、すわることに不安を示していましたが、いす座のまま、左右に重心移動をしたり、背中を伸ばす練習を繰り返し行ったところ、三年生になって、ひざの上に手を置いた姿勢ですわっていられるようになりました。

3) 体の動きと言葉の一致

好んでする動作に音声を結びつける学習に取り組みました。「パチパチ(手をたたく)」「スリスリ(手をこすり合わせる)」などは動作と言葉を結びつけることができるようになり、発展して教師の手をとって、遊びを要求することが出てきました。

4) 日常の生活

移動の際に、自分でなるべく動かせるようにしようと励ましましたが、困難でした。ところが教室にキーボードを置いたところ、そこまで自分で車いすを動かして来るようになりました。また、電源が入っていないときなど、教師の所まで車いすを動かしてきて、両手を合わせてお願いの動作をすることもありました。

五 まとめ

総合生活や日常生活の中では、自発的な行動がかなり見られるようになりました。キーボードを弾きたいために自分から車いすを操作する目的的な行動や電源を入れて欲しいという要求行動などです。家庭においても親が教えていないこと、例えばポットを押してお湯を出そうとしたり、急須から湯飲みにお茶を注ごうとしたりなど自発的な動きが見られるようになりました。友達にちょっかいを出すことも見られました。

養護・訓練の指導では、正しい体の動かし方やリラクゼーション、動作と言葉の一致などの課題について取り組みました。課題はまだ残っていますが、緊張をリラックスさせたり、腰や背を伸ばそうとする自発的な動きを引き出すことができました。

六 おわりに

T君は、いろいろな場面で自発的に行動することができるようになりました。このことは、T君が障害を克服した姿であると思います。

障害の状態にかかわらず、個々の成長を促していくことが、その克服につながっていくものだということを切に感じました。

最後に、T君は今年度から作業所に通うことになりました。新しい環境に早く慣れ、今後もがんばって欲しいと願っています。

 

M児の心理的不適価の改善を図る合科統合した指導

県立西郷養護学校

一 はじめに

本校では、「心身の障害を補い、社会の一員として生きることができるようにする」という教育目標に向けて領域・教科を合わせた指導を中心に教育を行っています。また、養護・訓練は特設されてはいませんが、児童生徒一人一人の養護・訓練の目標を具体化し、日々の教育活動の中で配慮しながら調和的な発達を目指しています。

本事例ではM児の心理的不適応の状態を理解し、それらの行動を改善するために、教師との信頼関係作りを基盤に、領域・教科を合わせた指導の中でどのように指導していったかを紹介していきたいと思います。

二 児童の概要

かかわり当初のM児は、聞き分けがよく、特に問題と思われるような

 

 

 


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