教育福島0190号(1995年(H07)10月)-025page

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「旅について思うこと」

橋本美子

 

だが、観光地と観光地をただ点で結んでいるようで、すごく味気ない気がする。

 

「趣味は何ですか」と聞かれると私は、よく「旅行です」と答える。旅行でも路線バスや電車を利用した旅が好きである。学生時代はお金はないが、時間はたっぷりあったので、良く利用したものだ。最近は、日数があまり取れないので、自動車を活用する旅が多くなってしまった。自動車を使うと時間が節約されて良いのだが、観光地と観光地をただ点で結んでいるようで、すごく味気ない気がする。

私が路線バスや電車の旅を好むのは、それが地域の人々の生活に密着した交通機関だからである。乗り込んでくる人々の様子や、車窓から眺める景色により、人々の暮らしを感じることができる。さらに、地域の人々と触れ合うことにより、旅の面白さが増してくるのである。例えば、バスの運転手さんに話しかけ、観光案内を聞き出したり、電車で相席になった人と話をするなど。特におばあさんは、よく「どこから来たの」なんて、声を掛けてくれる。思わず話がはずむと、手さげ袋の中からお菓子を出し、頂いたこともある。

また、大学四年の春、流氷を見るため網走に一人旅をしたときのこと。昼食の際、立ち寄った店で、アルバイトの女性と親しくなり、私がまだ、網走刑務所を見ていないといったら、「じゃあ、これから見に行こう」といって、案内して頂いたことがあった。これもバスや電車の旅だからこその出会いだったと思う。

しかし、路線バスや電車の旅にも難点がある。それは時間に制約されることである。観光していても、発車時間が気になってゆっくり見学できない。バスや電車時間が合わずロス時間がでてくるなど。また、バスを利用すると、料金が馬鹿にならない。学生には出費となるので、私はなるべくバスよりは電車を主に利用した。

さらに、荷物を持って歩くのが面倒であること。旅の終わり頃には肩が凝り、腕は筋肉痛になる。そうなってくると、やっぱり、荷物を車に乗せたまま身軽に動ける自動車の旅の方が、いいなあーと思ってしまう。

しかし、そういう時は、肩が凝ってもすぐ治る。バスや電車の待ち時間が長くても、もう一度辺りを見渡せば、新たな発見があるかもしれない。なにげなく時間つぶしに入った店で、思いがけない堀り出し物を見つけるかもしれないなどと、自分に言い聞かせるのである。

そして休日が近付くと、時刻表と地図を取り出しては、今度はどこへ行こうかと、次の旅での新しい出会いと発見に胸を弾ませるのである。

(県立石川高等学校教諭)

 

子どもの心に添って

吉田眞理子

 

の心に添ってやってみよう」と心に決め、私は二度目の特殊学級担任になった。

 

「気負わずあくまでも子どもの心に添ってやってみよう」と心に決め、私は二度目の特殊学級担任になった。

しかし、始業式の日から大失敗をした。ノートや本をほうり投げるH男と、「とりなさい。」「ヤダ。」を繰り返し、ますますH男にかたくなな態度を取らせてしまった。付き添ってきた母親はたまりかねたのだろう。「先生、まだ会ったばかりで慣れていないので無理にやらせないでください。」

と表情を強ばらせて言ったのである。その一言で、(ああ、今私は上から下を見下ろす指導者の目をしていたな)と我に返り恥ずかしくなった。H男からみれば見慣れない担任への

 

 

 


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