教育福島0190号(1995年(H07)10月)-034page

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(3) 文化の振興

 

国指定天然記念物

赤井谷地保護対策事業について

 

「赤井谷地」湿原は、猪苗代湖の北西岸約一キロメートルの海抜五二〇メートルのところにあり、面積が約四三、七ヘクタールで、南北に約八〇〇メートル、東西に約五〇〇メートルのほぼ楕円形をしています。

この湿原は、ミズゴケを主とした植生に覆われた高層湿原が発達していることや、標高が低いにもかかわらずホロムイイチゴなど本来北海道以北に生育する寒地性植物が分布しているなど、学術上貴重なものであることから昭和三年に国の天然記念物に指定されました。

 

・アオウキクサ・アサザ・ミズオオバコなどの水生植物も多数生育しています。

 

現在のところ、一九九種の植物がここに生育していることが確認されており、その中には前述のホロムイイチゴなど北樺太と共通の植物も多く生育しております。ほかには、ホロムイソウ・ツルコケモモ・ミズバショウ・ミツガシワ・オオバウメモドキなどがあり、さらに周辺の池にはコウホネ・トチカガミ・アオウキクサ・アサザ・ミズオオバコなどの水生植物も多数生育しています。

そのため、これまで学術研究や観賞のために訪れる人もいましたが、赤井谷地については一部の人たちが知っているだけで、尾瀬や雄国沼湿原のように一般にはあまり知られてはいませんでした。

 

より、周辺地域の開拓が進められ、それまでの泥炭地は水田に変えられました。

 

赤井谷地の周辺も長い間自然が損なわれることなく経過してきましたが、終戦後の食糧事情の悪化に伴う食糧増産政策により、周辺地域の開拓が進められ、それまでの泥炭地は水田に変えられました。

また、近年の農業生産性向上のための土地改良や圃場整備、排水改良など農地の基盤整備が行われ、赤井谷地を取り巻く自然環境も大きく変貌し、時期を同じくして湿原の乾燥化が進行していることが指摘されるようになりました。

このため、この貴重な湿原の保全と、将来的な管理・活用を図る観点から、まず、会津若松市教育委員会において平成四年度から湿原の現状把握調査が実施されております。

湿原の保全には水環境の整備が不可欠の条件であります。赤井谷地は湧水による地下水によってこれまで維持されてきたと考えられており、その湧水は湿原だけでなく周辺をも含めた広範囲の環境変化の影響と密接に係わりを持っています。

このことから、赤井谷地の保護・保全には湿原とその周辺の現状把握が必須の課題であることから、県教育委員会としては会津若松市の調査と連携を図り、湿原の総合的な保護・保全対策を講じるため、平成六年度から主として周辺部の現況把握調査に着手しております。

調査内容としては、特徴的な動物の生息状況、湿原周辺の植生状況、地質・地下水の状況の三項目のほかに、平成七年度からは周辺耕作地での農業経営と湿原に与える影響を検討するための調査についても実施しております。

これらの調査は平成八年度までの三ヵ年で終了し、九年度には会津若松市と県の調査結果を総合的に検討し、湿原の保護・管理・活用計画を策定する予定です。

 

基づく湿原の環境整備事業の実施について検討していく予定になっております。

 

さらに、一〇年度以降には計画に基づく湿原の環境整備事業の実施について検討していく予定になっております。

動・植物等を含んだ天然記念物は生命を持った文化財であり、時として生命を生きながらえさせるために、人の手を加えていかなければならない場合もあります。

そのため、他の文化財と同様に天然記念物についても、保護・保全を図るとともに、より多くの人に見てもらい、その価値について理解していただくことによって、本当の意味で「生きた文化財」となります。

また、私たちの生活様式の変化によって自然環境が少しづつ変化してきますが、そのような自然環境の変化の中で赤井谷地の天然記念物としての価値を維持していくためには、多くの努力が必要となります。

少なくとも今の時代で天然記念物としての価値を損なうことなく良好な状態で後世に引き継ぐことが、今の私たちに課せられた責務であります。

 

 

 


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