教育福島0190号(1995年(H07)10月)-037page

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新緑の頃から深緑の頃に

福島県立須川桐陽高等学校

 

本校は、平成七年四月一日、普通科・数理科学科の二学科からなる男女共学の県立須賀川桐陽高等学校として歩みを開始しました。新緑の頃から深緑の頃に、本校のイメージが洗練されていく実相を日々に感得することが出来たのは貴重でした。それは、本校が良きものを受け継ぎ、新たなるものへ挑戦しようとする気概に満ち溢れているからに違いありません。

男女共学と数理科学科の導入に当たり、まじめな生徒に入学して欲しいと願い、私たちは必死でした。中学校は延べ九十八校を回り、説明と要請に終始しました。三度訪問した中学校も少なくありません。同時に「教育課程」の改善と工夫に取り組み、新しい科目を開発しました。なかでも「科学英語」は、ガリレオからアインシュタインに至る自然科学概論を英文で読み、内容を吟味し、計算問題を解くという物理と英語と世界史(自然科学史)の総合的・学際的な科目であり、生徒に応用力を培おうとするものです。担当を理科教諭としたのが味噌です。事実、七月二十八日の八百人を集めた「体験入学」における「科学英語」のモデル授業は中学生に大変な評判でした。生徒の進路希望に応じるためには選択科目を多く設定しました。個別指導は、ノート添削を核として、その充実を図ることにしました。普通科も数理科学科も、男子も女子も、常に「同等に、公平に」扱うということは、当然のことですが、大切なことです。本校はこのことを実直に守っています。校内・校外の学力テストの成績上位者五十人を普通科と数理科学科で分けあっている学力実態を見れば、その感を一層深くします。今春優れた生徒が入学した結果、先生方に緊張感が生まれ、教材研究に一層勤しむようになりました。教師の変容が生徒の変容を促すどころか生徒の変容が教師の変容を促してしまったのです。すごいことでした。士気は一層高揚しました。

 

1年普通科授業風景

 

1年普通科授業風景

 

深緑が太陽の光を白く弾き返し始めたこの頃、放課後の校庭にはテニス部とサッカー部とソフトボール部と野球部が白球を追って疾駆する若やいだ場面が連続し、一隅では美術部が絵を描く傍らには小鳥が群れ興じる静謐な場面が共存する学園風景というものは、もうほとんど桃源郷的です。体育館からバスケットボール部とバレーボール部と卓球部と剣道部の活発な声が聞こえ、東校舎からは音楽部の演奏です。授業は勿論のこと、課外も、今日もきっと熱心であったろうという思いが裏切られることはまずありません。新校歌の「白雲は若者の夢」という歌詞が彷彿する能動的な百花繚乱のイメージが青春の季節を彩ります。

新校名のもとになった「桐」は天空に向かって真っすぐに伸びる木です。鳳凰伝説を宿すことから、古来、多くの人の心を集め、高貴な木とされました。だから、本校に集う生徒は「桐」にも譬えることの出来る清新な生徒であることを私たちは祈りました。祈りは届きました。今、意気軒昂たる一年生を目の当たりにして微笑まない者はいないでしょう。二年と一年生は誠実です。一年生を受け入れて颯爽として伸びやかです。

本校は、進学校としての大道を歩む決意です。苦労は覚悟の上です。「文武両道」という言葉が今ほど重く感じられるときはなく、今ほど生き生きとして光彩を放っているときはありません。

 

新校舎

 

新校舎

 

新緑の頃から深緑の頃に、のみならず、晩秋の夕映えの頃にも、風花の舞う頃にも、惻隠溢れて涸れざる魂魄を尽くす教育営為こそが私たちの責務であると認識する所以です。

 

 

 


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