教育福島0192号(1996年(H08)01月)-017page
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また、児童の自己評価力がどの程度高まったかを見るために、教師の評価と児童の自己評価とのずれを比較してみると、はじめは自分の動きを教師の評価より過大に評価する傾向が強かったが、学習が進むにつれてその差が少なくなってきた。このことは、自分の動きが高まるにつれ、動きを見る目が育ち、動きを正しく評価する力も高まったためと言える。2) 自己評価と動きづくりのつながり
自己評価がいかに動きづくりに生かされていたか、前時の反省と次時のめあてのつながりについて調べてみた。その結果、半数以上の児童が前時の自己評価の内容を次時の動きづくりに生かしていた。
3) 自己評価力を高める手だて
事後の児童作文には、「VTRで見ると、自分でやっていて下手かなと思ったことが上手だったり、これは上手だなと思う動きが変になっていたりした」とか「動きづくりのポイントはものすごく役に立った。自分の悪いところがすぐにわかるからだ」など様々な記述があった。これは、VTRにより自分の動きを正確につかみ、それを動きづくりのポイントカードと組み合わせることにより、自己評価に大変役立ったことを物語っているように思われる。
(2) 相互評価力の変容
「グループの動きづくりカード」の中から相互評価練習法の選択回数を見ると、動きができあがるにつれ相互評価を多用するようになった。
また、動きづくりの中で、相手の動きに対するアドバイスも増えてきている。動きを見る目が育ち、相互評価の楽しさを感じて意欲的に発表していたことがうかがえる。
(3) 教師の評価
教師のアドバイスが動きづくりに直接役に立ったという児童の数は少しずつ増えていった。これは、毎時間のVTR分析により、一人ひとりの動きをしっかり把握して授業に望んだ成果と言える。また、児童の教師からの支援に対する反応を見ると、学習が進み、自分の動きができあがっていくにつれ、アドバイスをそのまま受け入れるのではなく、自分の考えを述べる児童が増えた。これらは、動きに対する自分なりの考えをしっかり持つようになってきたためで、主体的に学習に取り組んでいたと言える。
3 身体表現力の変容について
児童の表現力の高まりを、動きのポイント毎に◎○△×で評価した動きの変容を見てみると、実践一では、特に表情と手、足の動きの伸びが著しかった。一方実践二では、鋭い瞬発的な動きに限定し、部位毎の評価をしたため、児童にもポイントがつかみやすかったと見えて実践一より◎の評価が多かった。
五 研究の成果と課題
1 研究の成果
○ 実際に動いてから表現題を設定すると、自由に動きをイメージするよりも、動きの高まりが早い。
そして、深く動きを見るようになるため、よりその子らしい見方・考え方が多く出され、個性を生かすことにつながった。
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○ グループ動きづくりでは、相手の動きを尊重することを中心に指導するとともに、お互いの動きの見せ合いによる動きづくりを進めることにより、個人の動きを生かしたグループ表現ができた。
○ 動きづくりのポイントを与えて
VTRと組み合わせることで、児童が自分で自分の動きを正しく評価し、適切なめあてを持って動きづくりに取り組むことができた。
○ 見るポイントをしっかりつかませ、相手の動きを見る時間を十分に確保することにより、相互評価を活用して動きづくりをする姿が増え、評価力も向上した。
○ 教師側も、VTRで児童の動きをじっくり見て、一人ひとりの動きを細かく把握し、また、動きについて児童との話し合いを十分に確保したことにより、その子なりのイメージに踏み込んだ動きの支援ができた。
2 今後の課題
○ 本研究では、児童のイメージがたくさん出されたが、その中でも動きにつながるイメージをどうとらえ、どう引き出すか、今後のより効果的で具体的な指導を通して明確にする。
○ 評価基準となる具体的な動きのポイントの吟味と効果的な相互評価形態の工夫に努めるとともに、教師の支援評価における情意面の把握と、個のイメージに応じた動きの支援のあり方をさらに検討していく。
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