教育福島0192号(1996年(H08)01月)-027page

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でいっぱいだ。一緒に担任をしているM先生の学級経営や、生徒への話し方、褒め方、叱り方等の一挙手一投足が勉強になっている。

一学期が始まって最初の学活の時間に、担任としての話をした。M先生が「中学校最後の一年だからすべてにおいて完全燃焼しよう」という趣旨の話をした。一方、私は「夢は大きく持とう。だから、先生は日本一のクラスにしたい。それと、クラスとして取り組む行事にはみんなで『バカ』になって燃えようよ!もちろん先生もバカになるから」といったような話をした。経験がなく、「若さとバカさ」しか売りものがない私が言える事は、こんな理想論だった。その後、班分けをして、それぞれの班のモットーを書かせたら、「完全燃焼してバカになる」と書いた班があった。M先生と「バカになって完全燃焼してほしいけれど、これじゃ、本当のバカになってしまいそうだ」と笑いながら話をしたが、初めて私の話を聞いて、わかってくれた生徒がいたことが嬉しかった。

修学旅行も無事終わって、校内陸上大会にあわせて各クラスで学級旗を作ることになった。仙台で学生時代を過ごした私は、この頃はまだ言葉の語尾が「だっちゃ」という仙台弁がしょっちゅう出ていた。そんなわけで生徒たちは学級旗に、M先生と私の似顔絵、それと「完全燃焼だっちゃ」という文字を描いた。

また、生徒に完全燃焼してほしいという願いから、学級通信の題を「完全燃焼」にして、題字を一人一人の生徒に書いてもらうことにした。

そんなこんなで、生徒とのふれあいの日々が続いている。学級旗をマントにして「だっちゃマン」になるなど、バカな事もたくさんやった。もちろん、うまくいく事ばかりではない。むしろ、失敗と後悔の連続である。経験のなさを悔しく思うこともあった。数年後、経験という武器を手に入れるだろう。でも、いつまでも心に「若さとバカさ」という武器は持っていたい。そして、生徒と一緒に完全燃焼していきたい。

(郡山市立小原田中学校教諭)

 

正月の風景

鵜沼美枝子

 

「あなたにとって大事なものは」

 

「あなたにとって大事なものは」

と聞かれたら、ちゅうちょすることなくあげられるものの一つに、これまでのすべての勤務校で作り続けてきた学級文集がある。今では、わが家の書棚の相当のスペースを占領している文集であるが、手にとれば、たちまち、あの日あの時へタイムスリップするのである。三人の子の母となったあの子も、たくましい父親としてがんばっているあの子も、

「○○ちゃん」

「○○君」

の顔の当時へと戻っていくのだ。

文章を書くことが大の苦手だったわたしが、子どもたちの書く文章のとりこになってしまったのは、学生の時であった。それまでに読んだどんな文章よりも熱いものをわたしにぶつけ、心を揺さぶった。

「ああ、わたしも、こんな文章を子どもたちに書かせることができたら」

そして、新任の地で四年生の子どもたちと作った記念の第一号。今、手にすると、それは五十ページにも満たないガリ版刷りの実に粗末なものだが、第一号への気負いとうれしさだけは、変色した紙面からも十分伝わってくる。

「子どもたちに書かせようと思ったら、自分でも書かなけりゃ。そうでなければ書かせる資格はないよ」

という恩師の言葉を胸に刻み、一日一行でも書くことを心がけてはいるが、忙しさを理由に棚上げしてしまうこともたびたび…。

「これでは、子どもに強いことは言えないなあ」

と反省することしきりである。振り返ってみると、かなり無茶をしたと思うこともあり、かえって書くことを嫌いにさせてしまったのではと、冷や汗の流れる思いもする。それだけに、様々な思いがたっぷり詰まったこれらの文集は、何物にも代えがたいのである。

時の流れとともに、ガリ版は印刷機へと姿を変え、わたしの鉛筆だこ

 

 

 


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