教育福島0192号(1996年(H08)01月)-033page

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中国の小学生に送った。中国から全員に手作りのしおりが届いた。(写真2)

2) 成果

話し合いの中で、友好を結ぼうとする様々な意見が活発に出された。全員参加で交流したことで、国際的な視野で考えることができるようになった。

(4) 「中国六千年の秘宝展」

(郡山市立美術館)の鑑賞

 

八 研究の成果と課題

 

1 研究の成果

(1) 国際感覚と国際理解教育

○ 国際感覚を身につけるには、様々な出来事や事象等に対して、好奇心や強い関心を持たなくてはいけない。その意味では、日常生活の中で、世界の国々について考える場や機会を設定したことで、進んで外国の様子を調べたり、家にある世界の民芸品等をさがしたりするなどの具体的な行動が見られ、成果が表れ始めた。

○ 世界の多くの国を知り、進んでそれらの国について調べ、関心を示すようになった。

○ 道徳や社会科の授業、学校行事等で、世界の国々について調べる学習を多く取り入れたことで、世界の情勢にも興味を持ち始めた。阪神大震災での、海外からの援助について進んで調べるなど、国際的な視野が広がった。

○ 外国語は英語だけだと思っていた児童が多かったが、体験的な活動を通し、多くの言語があることを理解できた。また、言葉が通じなくても、心があれば国際交流ができることをダンスや書道交流等を通して学ぶことができた。

(2) 文化理解と国際理解教育

○ 家庭科や音楽科、体育科の学習を通して、世界の国々の衣食住や芸術(絵画、書道、音楽、踊り)、文化財等の幅広い文化に触れることができた。

○ 他国の文化に触れることで、自国の文化を見直す機会が設定でき、尊重する態度を育てることができた。

○ 他国との同質性と異質性の指導を児童の実態に合わせて行うことができた。これにより、偏見や先入観がなくなり、「わかる努力」をしようとする意欲を持つことができた。

(3) 人間尊重と国際理解教育

○ 多様な考え方の指導を通して、学級や自分自身を客観的に見つめ、より良くしていこうとする態度が見られるようになった。

○ 研究実践を通して、他国の人や身近な友人に対する差別や偏見がなくなり、お互いの良さを認め合い、仲の良い学級づくりができた。

○ 世界の国の人々とも進んで親善を図ろうとする意欲がでてきた。

○ 以前は、他の学年とのつながりが少なかったが、授業と行事等の関連を図った実践を通して、上級生らしい態度が身につき、全校的な視野で行動できるようになった。

以上の三つの視点からも明らかであるが、四月の段階で外国人に対して、「いや」「見たら逃げる」と言っていた児童が、この研究を通して心から友好を結ぼうとする気持ちに変わっていった。

 

写真2 中国との書道交流

 

写真2 中国との書道交流

 

学校生活においても、下級生に対して親切にでき、集団登校などで具体的な行動となって表れてきた。

これらの様子からも、思いやりの心を持ち、広い視野で行動できる一人ひとりに成長してきたと言える。

2 今後の課題

○ 研究の性質上、教師が準備したものにそって学習するという形態になりがちである。さらに児童自身が身近なところから国際性を見い出し、興味・関心を持続できる支援のあり方を検討する必要がある。

○ この研究を通して、最も難しいと実感したものの一つは、自国と他国の「同質性」と「異質性」をどう指導するかということである。どちらかに偏っては真の国際理解とは言えない。今後も児童の実態をつぶさに見つめながら、相反する真理をバランスよく指導する必要がある。

○ 教育活動全体を通して、人間教育のあり方を模索してきたが、国際理解教育の視点をさらに明確にし、一人ひとりの児童に光をあてた研究の方法を検討する必要がある。

○ 学習の中で学んだ知識を高めるためにも、体験的な活動をさらに検討する必要がある。また、外国人との交流や文通など、直接触れ合う活動を取り入れていきたい。

 

 

 


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