教育福島0193号(1996年(H08)02月)-030page
・平仮名の学習が始まった児童には個別学習のため、文中の単語を抽出し、絵と文字をマッチングしたカードを準備した。「言葉の袋」からクイズ的に取り出して学習するようにしたので、喜んで取り組んだ。
・想像力と作文意欲を高めるため、物語は岩山で宝物を発見したところまでとし、その後の展開を各自で考えさせるため、後は空白のページとした。「書きたい」という気持ちが高まり五ページも続きを書いた児童や、続きを書くことが難しい児童には問いかけによって思いや考えを引き出し、担任が代筆した。作文の苦手な自閉症のA児は自ら「たから島パート2」を書き始め、劇化しようと担任に要求した。
4 友達や人とのかかわり方の指導
・一人一役を条件として劇を考えた。友達と物語を読み合ったり、大道具を作ったり、身支度を手伝う姿等が見られた。互いに助けたり、助けられたり、その中で交わす会話も、コミュニケーションの力をつける大切な学習となった。
・授業の様子を他の教師に見てもらったり、合同おたのしみ会で他校の児童とダンスをしたりする交流も有意義な体験となった。
三 成果と今後の課題
学年差、個人差のある児童が同一の教材に取り組み、興味関心を持ち続けて学習できた。それは、物語を自分達で作ったという気持ちと、内容が児童に適していたためであろう。毎時、各自の課題を明確にしたこともよかった。何よりも効果的だったのは、物語を劇化し発表するという目的を持たせ、総合的に内容の関連を図って指導した結果であると考える。これまでも、店の見学と買い物(計算)、季節の変化と気温(表・グラフ)など、教科等の関連を図りながら児童の生活を大切にした指導をしてきた。
今後も、一人一人の能力や個性を伸ばすため、領域・教科を合わせた指導(生活単元学習)を核とし、領域・教科等の関連を図った指導を工夫し、実践していきたい。
学校・社会生活に適応させるための指導の在り方
−T君との関わりを通して−
岩瀬郡鏡石町立第二小学校
武田正子
一 はじめに
五年前、本校へ転任と同時にはじめて特殊学級を担任することになりました。三名の児童にあいさつをすると、六年生のMさんが「先生はやさしい」と言いました。最初のこの一言に、長い間学力中心の指導をしてきたことを深く反省し、何をどのように指導したら良いのか試行錯誤の日々が始まりました。
二名の児童は自分を表現し伸び伸びと生活していましたが、二年のT君は人とのかかわりができず机にじっと座っている状態でした。そこでT君が将来自立して社会生活を送るために必要な力を身に付けることを願って取り組んだ五年間の実践を述べたいと思います。
二 T君のプロフィール
・昭和五八年に生まれ、生後六ヵ月頃障害に気づき一歳半まで週三回の運動機能訓練を受けた。三歳半から五歳までダウン症児の幼稚園に通園し、就学前一年間は保育所に通いながら月一回言語訓練を受けた。平成元年本校入学と同時に特殊学級に入学した。
・一年間で五十音の読み書きを覚え、自分と家族の名前を言えるようになった。しかし、言葉はなかなか話せず二から三語であった。数については、三ぐらいまでの認識があった。
・体が硬く、動くことが特に嫌いでじっとしていることが多く、人とのかかわりができずにいた。
・T君が関心を示していたのはバックホーという土を掘る機械であった。学校から帰ると工事現場に行き、夕方までじっと見ていた。
三 T君の指導のねらい
○教師とのかかわりを通して人間関係を広げる。
○好きな音楽を通して、行動を活発にする。
○体験や経験を通して、興味・関心を広げ自己表現ができるようにする。
四 具体的指導の実践
1 人間関係の確立を目指して
T君は大勢の人を恐れ、同学年の児童に近づこうとしなかった。また、初対面の人には非常に警戒心が強いので、教師との人間関係を確立することを重視した。
〈おもちゃをつかって〉
T君はバックホーに興味を示すので、さっそくおもちゃのバックホー