教育福島0194号(1996年(H08)04月)-007page
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]()
いまは亡き名エッセイスト・荒垣秀雄さんは、その著(老樹の青春=朝日新聞社)で、樹木の長寿について、造物主は樹木だけが根付いたところから一生動けない。だから数百年はおろか、何千年の老木でも年に一度は若返って、青春を楽しむ特権を与え給うたに違いないと書いておられる。なるほどと感心した。自分にも青春という若い日があった。二度と返らないだけ想いは深く、懐かしい。
多摩川の水鳥はもう北国へ帰ったが、ヤマバト、ヒヨドリ、ムクドリ、オナガ、シジュウカラ、メジロ、スズメなど、この季節の野鳥は樹木をとび交い、若芽、花、虫を追ってはさえずり、忙しい。春告げ鳥のウグイスの初鳴きはいつもより二週間ほど遅れて聴いた。いかにもこの春は寒い。そこはかとない春愁を覚えるのはそのせいかもしれない。川の土堤にツクシ、ヨモギ、ノビルや濃紅の蕾をつけたホトケノザなど、先を競うかのようだ。これら草木にもみな名前がある。それを知れば、にわかに親しみが湧くから妙だ。しゃがみ込んでやさしく語りかけたい。中国の言葉に「山川草木、みな知己」とある。古人もみな自然を友に遊んだのだ。
事務所が銀座にある。雑踏と騒音の日々に感性が衰える思いがする。年のせいだけではあるまい。せめて山へ行き、森を歩き、野に遊びたい。ときに雪解けのせせらぎをきき、風の音に耳をすましたい。そして静けさのなかで、いのち分け合いし草・木・鳥・獣・虫・魚とこころでふれあいたい。それが五感を研ぎ、みずみずしい感性をとり戻す術(すべ)であろうか。
【著者紹介】
川島廣守・かわしまひろもり
・大正11年2月27日生
・福島県会津若松市出身
〔略歴〕
昭和 十四年 県立会津中学(旧制)卒
十五年 高等予備試験合格
十七年 中央大学在学中高等試験行政科試験合格
同年 内務省入省(宮城県属兼警部)
二十年 海軍主計大尉(海軍第九特別根拠地隊主計長兼分隊長)
スマトラの北端(サバン島で終戦)
二十三年 札幌警察管区本部警備課長
昭和 三十年 東北管区警察局公安部長
三十二年 ユーゴスラビア大使館 一等書記官
三十六年 警察庁外事課長
三十八年 警視庁公安部長
四十二年 警察庁警備局長
四十五年 警察庁警務局長
四十六年 内閣調査室長
四十八年 内閣官房副長官
五十四年 日本鉄道建設公団総裁
五十六年 公害等調整委員会委員
五十九年 セントラル野球連盟会長就任
〔兼職〕
昭和五十五年 (社)日本外交協会理事
五十八年 (財)オイスカ産業開発協力団監事
平成 三年 (財)本田財団理事長
平成 四年 政治改革推進協議会(民間政治臨調)
地方分権推進委員会委員長
六年 会津大学参与会参与
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |