教育福島0194号(1996年(H08)04月)-014page

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豊かな心を持ち、進んで実践する生徒を育てる道徳教育

−道徳の授業の充実を通して−

 

只見町立明和中学校

 

一 はじめに

 

本校の生徒は、純朴かつ素直であり、働くことをいとわない。また、小規模校であるため、お互いの気心も知れ、協調性に富む。その反面、社会的な経験が希薄であり、より広い視野からものごとを考えたり、新いことに進んで取り組んだりする姿勢が望まれる。そこで、道徳の授業と集会活動を通して主体的に活動する場を設定し、広い視野を持たせるように指導・援助を続けることによって、豊かな心を持ち、進んで実践する生徒を育てることを研究のねらいとした。

 

二 研究の概要と成果

 

1 道徳の時間の指導の工夫

活発な意見交換を通して、多様な価値観にふれさせるために、第一年次はモラルジレンマ資料を用いた授業実践を中心に進めてきた。その結果、道徳的判断力が高まった。第二年次は、心情面に力を入れ、より多様な授業展開を工夫してみた。その具体例を簡単に述べる。

(一) 自作の感動資料を用いた授業

「生命尊重」の主題で、大石邦子さんの著書、および講演をもとに資料を作成し、さらに本校生徒あての大石邦子さん本人のメッセージテープを用いて授業を展開した。思わず涙ぐむ生徒も見られ、感動的な授業になった。

(二) 自作ジレンマ資料を用いた授業

「自然と人間」の主題で、地元只見町を想定した過疎の町におけるスキー場開発とイヌワシ保護をめぐるジレンマを扱った資料を自作した。生徒にとって身近な問題ととらえられ、きれいごとに終わらない、本音での活発な話し合いがなされた。

 

自作ジレンマ資料を用いた授業

 

自作ジレンマ資料を用いた授業

 

(三) 単元構成の授業

「生命尊重」の主題で、感動資料やジレンマ資料を用いた三時間扱いの授業を試みた。第一時の学習が第二時、第三時に生かされたこと、様々な視点から主題に迫れたことが成果としてあげられる。

2 道徳的心情を高める集会活動の充実

より広い視野を持たせるための試みとして、次のような様々な集会活動を実施してきた。

(一) 道徳集会…本校職員の講話

(二) 道徳講話…外部講師の講話

(三) ふれあい集会…生徒相互の意見発表会

ここでは、二つ目の「道徳講話」について述べる。これは、地域の様々な経歴の方々による、体験に裏打ちされた味わい深い講話で、生徒に訴えるものが強かった。このうちの三回は、保護者も一緒に聴いた。

○ 青年海外協力隊員

○ 本校出身の医師

○ 特別養護老人ホーム相談員

○ 隣接村の教育長

○ 元中学校長

○ 地元小学校長

3 生徒全体の活動の場の設定

奉仕活動や生徒会活動において、生徒が主体的に活動できる場を設定し、指導・援助を続けてきた。その結果、徐々に自主性が身についた。

(一) 親子クリーン作戦

夏休みに日時を設定し、地域や家族の人々とともに、それぞれの地区の清掃に取り組んだ。地域や社会の問題に目を向ける生徒がでてきた。

(二) 花いっぱい運動

土の配合から開花まで、一人一つのプランターを担当し世話をした。

(三) 校舎内外の美化活動

初めは教師が呼びかけて行っていたが、しだいに自分たちで気づくようになり、早朝や昼休みに進んで取り組む姿が見られた。

(四) 生徒会活動

文化祭などの各種行事においても、生徒の主体的な活動を援助するよう配慮した。その結果、募金活動や生徒会会則、生徒心得の見直しなども生徒中心に進めることができた。

 

三 今後の課題

 

1 教材研究をさらに深め、適切な資料の開発や指導方法の工夫に努めるとともに、新しい指導方法も積極的に試み、指導力を高める。

2 生徒の自主的な活動を助長するための指導のあり方を、さらに工夫する。特に、生徒個々の発達段階に応じた指導方法を工夫する。

 

 

 


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