教育福島0195号(1996年(H08)06月)-008page

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特集1

 

生徒指導の充実

義務教育課

 

一 生徒指導に求められているもの

 

1 教育環境の変化への対応

本県においても、最近の出生率の低下などによる少子化と高齢化の傾向がみられる。また、県土発展に伴う都市化の進行などによる教育環境の変化は、児童生徒の健やかな成長を阻害する要因にもなっている。そして、児童生徒の学校生活への不適応による、登校拒否やいじめ問題の発生など、生徒指導上の問題は憂慮すべき事態である。

そこで、これからの教育環境の変化をふまえながら、より一層児童生徒の実態を的確にとらえ、二十一世紀を担う児童生徒が、豊かな心を持ち、たくましく生きる人間として成長できるよう、心身の健全な成長を目指して、学校教育の積極的な推進を図ることが、最も重要な課題である。

すなわち、生徒指導にとっては、児童生徒の心身の健やかな成長を育むために、児童生徒のかかえる不安や悩みなどに適切に対応し、児童生徒一人一人の、適応能力を高める教育相談体制の充実を図ることが大切である。また、これからの社会の変化に主体的に対応し、人間の在り方生き方などを含めた、心の教育の充実を図っていくことが求められている。

(1) 学校教育の人間化

児童生徒一人一人が人格の形成を図り、多様で変化に富んだ二十一世紀をたくましく生き、豊かな未来を創造して行けるよう、学校教育の改善・充実を図ることが、強く求められている。

特に、教育の本質を見つめ、学校教育の実態をふまえて、現実的に対応していくことが大切である。

先の臨時教育審議会の答申では「学校教育の人間化」ということが学校教育の課題であると述べられた。すなわち、児童生徒相互の人間関係、児童生徒と教師の人間的な心の交流を大事にし、人間としてたくましく生きる力を育て、豊かな人間形成を図るよう努めることが望まれるということである。

それはまた、裏返せば、「学校教育は真に人間的環境であるか」という厳しい問いかけであり、問題提起である。各学校においては教育活動を見つめ直し、一人一人の児童生徒が生き生きとした学校生活を送ることができるよう、検討していく必要がある。

(2) 学業指導の充実

生徒指導の充実を図るためには、生徒指導の最大の場である「学業指導の充実」を図ることが大事である。児童生徒は一人一人が学びたい、わかりできるようになりたいと願っているものである。よさや可能性を生かし、豊かな自己実現が図られるようにすることが大切となる。小学校一年生を担任したことのある教員なら、誰でもそのように実感した記憶があるのではないだろうか。

「今日から文字の勉強をしましょう」

と言えば、

「やったあ」

と喜び、

「漢字の勉強をするよ。さあ、一はこう書きますね」

「知ってるよ。一は書けるよ」

と得意になり、算数の数の計算にも一本一本の指で確認しながら、どの子も真剣に考えている姿が見られる。しかし、小学校の高学年、中学生ともなるとそうは行かない。それは、個性があり、得意不得意があり、能力差もあるのだから、ある意味では当然とも言えるが、得意・不得意教科があり、できるできないということはあっても、それは、ある教科の学習である。それがすべてではない。それ以外の分野では、伸び伸びと活動できる。そうでなければならない。そしてまた、もし、教科の学習ができなくても、学校生活の別の分野で、何か自分らしきを発揮することができるような、学校生活を送ることができなければならない。(もちろん、学習が十分に身に付かなければ、それに応じた指導をすべきである。そしてまた、ある程度あるいは相当程度身に付けている場合も、さらに伸びることができるよう、それぞれに対して適切な指導をすべきである。)

 

 

 


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