教育福島0197号(1996年(H08)09月)-042page
養護教育センター通信
障害のある子供の理解のために
障害の重い子
はじめに
母親や学級担任から「この子は障害が重くて…」ということばを聞くことがあります。マスコミなどでも「重い障害を持った」などということばを使っています。それでは、「障害が重い」とはどんなことなのでしょう。たとえば、目が不自由な子の場合は、周りの人や物が少し見える状態よりは、全く見えない状態の方が障害が重いといえます。耳が不自由な子の場合は音や声が全く聞こえない状態を障害が重いといえます。
「障害の重い子」については、共通の決まった定義というものはありませんが、本稿では次のような障害が重なり合っている子供たちを表す言葉とします。
○日常の姿勢は寝たきりかそれに近い
○意思を伝えることが困難
○自分から物に触れたり見たり聞いたりすることが少ない
○常に介護を必要とする
一 障害の原因
障害の重い子供たちは、脳が広い範囲で損傷を受けていることが多く、図にあるように、知的障害、脳性まひからくる運動・動作の障害、てんかん発作、さらには自分で自分を傷つける自傷行為や、同じ動作を繰り返し行う常同行動などの行動上の問題まで多様な障害が重なり合っています。
これらの障害を引き起こす脳の損傷は、次のようなことが原因となっていることが多いといわれています。
○低酸素血症 ○仮死出生 ○低体重出生 ○酵素の代謝異常 ○その他の分娩異常 ○髄膜炎・脳炎 ○水頭症 ○小頭症 ○事故による頭部への外傷
障害が起こる時期は大きく出生前と出生後に分けられますが、いずれも何らかの原因により中枢神経系(脳)が損傷を受けることによってあらわれてくるのです。
二 障害の重い子とのかかわり
障害の重い子とのかかわりについては、家庭はもちろん教育(学校)、医療、地域など、それぞれの立場で子供の実態に応じた適切なかかわりが要求されます。同時に、これらの子供をとりまく様々な機関や人々が、相互に連携をとりながらかかわっていくことが大切になります。
(1) 家庭でのかかわり
我が子の健やかな成長と健康を願わない親はいません。特に障害の重い子は体調が変動