教育福島0197号(1996年(H08)09月)-043page

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しやすいので、健康について心配することが多いのではないかと思います。

障害の重い子とかかわるときは、私たちにとって何でもないことでも、子供にとっては重大な場合があるので、よほど注意しなければなりません。私たちも夜更かしをすると、翌日一日の生活の調子がおかしくなります。障害の重い子は、生活のわずかな変化に対して心身をうまく調整することが困難なので、私たちが思っている以上に体調に影響があります。ですから、私たちがその子の日常の様子をよく観察し、生活リズムを整えてあげることが大切になってきます。また、医療的なケアが生活の中心になっている子供たちに対しては、常日頃の健康状態の把握が非常に重要になります。

この他にも、食事や呼吸がしやすい安定した姿勢をとらせることなど、生活の中で気を配らなくてはならないことはたくさんあります。子供たちとのかかわりの中で共通していることは子供とかかわり手とが安心してともに遊んだり、生活するということです。日々の生活の中での子供の様々な活動をかかわり手が楽しく感じられるようになると、子供自身も楽しさを感じ、ひいては子供の生活を豊かにすることになります。

 

家庭でのかかわりのポイント

 

家庭でのかかわりのポイント

○日常生活のリズムを大切に

○子供とのコミュニケーションを大切に

○日常の健康と安全を大切に

○生きがいの持てる生活を大切に

 

(2) 学校でのかかわり

障害の重い子は、自分から周りに働きかけていく力が弱かったり、困難だったりしますが、周りからの適切な援助によって笑顔が見られるなど、少しずつ変容していきます。しかし、周りの環境を整えるだけで、自然に変容していくわけではありません。環境を整えることはもちろんですが、発達の遅れへの具体的な援助が欠かせません。

障害の重い子の教育の場として、養護学校や家庭への訪問教育などがあり、一人一人の障害の状態にあった個別の指導が行われています。主な教育内容は、障害の状態に応じて教科、道徳、特別活動、養護・訓練などの内容を合わせて行う学習や養護・訓練を主とした学習を行っています。養護・訓練とは、あまり聞き慣れないことばですが、障害の重い子の教育には、大きな位置を占めています。具体的には、五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)の活用や、コミュニケーション能力の向上と機能的活動に関する指導などがあげられます。子供一人一人の障害の状態を改善し、子供の調和的な発達を促すために行われる教育活動が「養護・訓練」といわれるものなのです。

よく「障害の重い子の教育は宝さがしです」といわれます。障害の重い子は、できないところを探すときりがありません。しかし、どの子にもできることやすばらしいところなど、その子のよさがあるのです。その輝いている部分を探し、引き出すのが教育なのです。

人間として成長し、持てる力を十分に発揮して充実した生活を送ることは、誰もが望むことです。しかし、子供たちにそのような生活を保障するためには、生命や健康を維持するための配慮、子供一人一人に応じた適切な対応、生活の質(QOL)の向上を目指した課題の設定などきめ細かな支援が大切になります。障害の重い子とかかわる時には、身辺処理の自立をはかることだけを目標にするのではなく、たとえ様々な援助を必要とする子供であっても、より快適に日常生活を送れるように支援していくことが大切です。

 

おわりに

 

ここまで、家庭と学校でのかかわりを中心に述べてきましたが、家庭や学校に限らず、あらゆる場面で子供たちが生き生きと活動できることが、生きがいのある生活をつくる第一歩です。子供とともに活動を楽しみ、家族とともに喜びを分かち合いながら、子供が毎日を楽しく生活できるように支援することが大切だと思います。

 

 

 


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