教育福島0198号(1996年(H08)10月)-022page

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(3)文化の振興

 

埋蔵文化財の保護について

 

土地に埋蔵されている文化財である埋蔵文化財は、本県の歴史や文化を理解する上で欠くことのできない多くの情報を提供する貴重な歴史的遺産であり、将来の文化の向上発展の基礎となるものです。

現在、本県には一三、四九九箇所の埋蔵文化財包蔵地(遺跡)がありその保存と活用に努めているところですが、工事などでやむを得ず消滅する場合は、事前に発掘調査を実施して詳細な記録を作成し、報告書として刊行しています。

本年度も県内五地区で発掘調査(調査担当・岡福島県文化センター)を実施し多くの学問的成果を得ています。

 

「玉造」の文字のある土器(大猿田遺跡)

「玉造」の文字のある土器(大猿田遺跡)

 

水場(大猿田遺跡)

水場(大猿田遺跡)

 

いわき市四倉町の大猿田(おおさんだ)遺跡からは、奈良〜平安時代の竪穴住居、倉庫、須恵器窯、鍛治遺構、水場遺構などが発見されました。特に『和名抄』に記された古代磐城郡玉造郷の実在を示す「玉造」の文字が書かれた土器、搬入の腰帯に着け、その位を示す鈴帯(かたい)金具、重い岩石などを運搬する修羅(しゅら)という木製のソリ、郡の役所が労役のため十六人の男子を招集した命令書である木簡など、古代のいわき地域の歴史を解明する貴重な資料を提供しました。

福島市飯坂町茂庭の獅子内遺跡では、縄文時代の集落が発見され、摎上川上流域の生活や文化の様子が解明されつつあります。特に石器の原材料が、険しい山々を越えて山形県側から福島県側に搬入されたことが分かり、当時の人々の交流圏の広さを物語る良好な資料となりました。

 

鎗帯金具(大猿田遺跡)

鎗帯金具(大猿田遺跡)

 

縄文土器(獅子内遺跡)

縄文土器(獅子内遺跡)

 

鹿島町川子の大◆(おおさく)遺跡からは、平安時代の製鉄炉や鍛冶炉、その工人の住居が発見され、鉄の製作から加工まで行っていた製鉄遺跡の様子が明らかになりました。特に台所を示す「厨(くりや)」と書かれた土器は、ここを当時の役人が随時訪問していたことを示すものと考えられます。

このような調査の成果を多くの県民の皆様にお知らせするために、発掘調査現地説明会を各遺跡で開催しており、今年も多くの皆様にご見学いただきました。

また、八月一〜三日には、埋蔵文化財保護についての理解と関心を深め、調査技術の向上を図るために市町村教育委員会及び学校の教職員等を対象として、埋蔵文化財発掘技術者講習会を開催したところ、二九名の方々の受講がありました。

さらに、埋蔵文化財など文化財の調査・管理・活用・研修などの拠点となる文化財センター(仮称)整備の準備作業も進めているところです。

このような事業などを通して、先人の文化的遺産である貴重な埋蔵文化財を保護・活用し、良好な状態で後世に伝えるために努めていきたいと思います。

 

発掘技術者講習会のようす(会津若松市東高久遺跡)

発掘技術者講習会のようす(会津若松市東高久遺跡)

 

 

 


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