教育福島0199号(1996年(H08)11月)-022page
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水族館における教育活動
一 自然観察体験
水族館など動物展示施設の持つ役割は、「レクリエーション」「教育」「研究」「自然保護」であると古くから言われてきました。最近では、この中の「教育」と「自然保護」が動物展示施設にとって最も大きな目標になると考えられています。これは、「自然保護」は種の保存と管理に、「教育」は自然教育と環境教育にそれぞれ集約されます。
水族館は生きた生物を飼育して展示するところに意義があり、展示の中で展開される「生物の観察」を通して、自然についての知識の吸収と自然観察の体験ができます。
生きた生物を観察し、科学的に理解するという体験は、
ア 興味の獲得と疑問の発見
イ さらなる観察と情報収集
ウ 科学的な理解
エ 新たなる疑問の発見
オ 再び生きた生物の観察
とエンドレスに探究心を持つことができます。
水族館の自然は正確には本物に似せた人工自然ですが、自然に対して科学的に接し、理解するための基本が獲得できることから、水族館は自然観察のトレーニングに最適な場所であるといえます。
水族館における自然観察体験は、自然と接するという意味で、環境教育の重要な基盤になります。
二 本施設の教育プログラム
水族館の教育活動の中で最も重要なことは、できるだけ多くの来館者がこの観察体験を持つことができるように補助、誘導できるシステムを持つことです。
具体的教育プログラムは今後検討を重ねる必要がありますが、現在想定しているものを例示すると次のとおりです。
・展示解説
専門職員やボランティアによる解説活動を積極的に行います。
・ガイドツアー
団体や希望者を対象とした、展示解説を行います。
・バックヤードツアー
通常見ることのできないキーパースペースを解説員の案内のもとで見学します。
・給餌解説
係員が実際に給餌を行いながら動物の行動を解説します。
・スクール活動
春、夏、冬休みの一〜数日を利用し、プログラムに沿った実物教育活動を行います。
・動物友の会(愛好会)
施設の最新情報が掲載された機関紙が配付されます。また例会に出席できます。
・移動水族館
類似施設のない地域で特設展示会を開催します。
・自然観察会
実際のフィールドで生物の観察や採集を行います。
・企画展示
展示テーマを設定し、より詳しく丁寧な展示を行います。
・出版物
学校団体用ワークシート、年報、機関紙、写真グラビア他の出版。
・その他
夜の水族館、一日飼育係、動物里親制度などの企画を行います。
三 関係機関との連携
・シンポジウムなどの開催
海外を含む先進的な類似施設との連携・協力を推進し、セミナー・研究会などを開催します。
・県水産試験場との連携
本県の水産業や水産試験場の研究成果を紹介するコーナーを設けます。
・大学、研究機関との連携
外部研究機関との協力・連携を図り、より高度な研究を試み、その成果を展示に繁栄します。
・学校団体、社会教育施設との連携
当施設のメッセージを次世代を担う青少年に積極的に伝えるため、教育、研修プログラムの連携やネットワークの構築を推進します。
四 ボランティアの参加奨励
専門ボランアィア(展示解説員)を育成するための専門的な研修カリキュラムを作成し、研修終了者には施設の運営に積極的に参加してもらいます。
おわりに
動物展示施設の学校団体の利用の現状は校外学習の遠足程度にとどまっている例が多いと思いますが、欧米では教育委員会が中心となり、学校と施設が密接な連絡をとりあい、各学年にふさわしいカリキュラムを用意し対応しています。また施設を利用しなくてはならないような教科が組みこまれている例もあります。
日本ではなかなかここまで踏み込めないのが現状ですが、本施設では来館される団体と事前打合わせを積極的に行い、動物展示施設における教育機能を充分に発揮できるように努力したいと考えています。
本施設は、本県の新しいシンボルとして多ぐの方に親しまれ、地球環境時代における人々の海への興味と関心にこたえうる施設として役割を果すとともに、地域の再開発事業の中核施設として本県振興の一翼を担うものです。県民の皆様を始めとして、関係各方面の御支援を賜りながら進めてまいりたいと思いますので、今後とも御協力をお願いいたします。
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