教育福島0200号(1997年(H09)01月)-018page
一人一人が生き生きと活動し基礎的・基本的な内容が確かに定着する指導過程の追究(算数科)
−「量と測定」を中心に−
福島市立金谷川小学校
一 主題設定の理由
1 算数科の学習指導改善の視点
算数科の学習指導にあたっては、一定の知識や技能を教師から児童へと一方的に伝えていく指導から、児童自身が自ら学ぶ意欲を持ち、思考力、判断力、表現力を駆使しながら「知識・技能」や「数学的な考え方」を主体的に身に付けていく指導へ改善していくことが求められている。
2 児童の実態、算数指導の反省
本校の児童は、日常生活においては明るく活動的である。しかし、算数科の授業においては積極的に問題を解決しようとする意欲に乏しく、消極的な姿が多く見られる。これらの要因について、学力検査の結果を分析したところ、特に次の二点が問われた。
1)既習の基礎的な知識や技能が十分に定着していないのではないか。
2)具体的な操作や体験的な活動をとおした学習や問題解決的な学習など児童主体の学習の展開が不十分で、教師主導の授業となっているのではないか。
3 教育目標具現化の立場から
「心身ともに健康で、学ぶ意欲を持ち、自らをきたえ、共に高め合う主体性のある子どもの育成」を教育目標とし、児童が自分の考えを持ち、生き生きと活動する学習指導の質的改善に努めてきた。とりわけ算数科においては、児童の活動意欲を促す問題解決的な指導過程の改善によって、児童に「基礎的・基本的な内容の確かな定着」を図り、主体的活動の向上を目指した指導の取り組みが重要である。
以上のことを踏まえ、日々の授業を通して実践的に研究を深めることとした。なお、学力検査において、他領域と比して落ち込みの見られた「量と測定」領域を中心として研究を進めていくことにした。
二 研究の見通し
1 研究仮説
問題解決的な学習において、基礎的な知識や技能を獲得する場と、習熟する場の工夫をすれば、一人一人が生き生きと活動に取り組み、基礎的・基本的な内容の確かな定着が図れるだろう。
2 仮説のための理論
(1)問題解決的な学習について
問題解決的な学習の基本過程を次の4段階でとらえることとする。
○学習課題を把握する場
○主体的に自力解決する場
○各自の考えを生かした練り上げの場
○学習の成果を振り返り、定着を図る場
(2)基礎的な知識や技能を獲得する場の工夫
自力解決と練り上げを『基礎的な知識や技能を獲得する場』として統合する。課題に対して、思考力や判断力、表現力を駆使しながら自分なりに解決し、集団での検討を通して様々な解決方法の数理的な処理のよさに触れ、新しい知識や技能を発見したり、理解したりすることを「獲得する」ととらえる。
1)自力解決の個に応ずる支援
支援の仕方を明らかにするために児童の反応を三段階で分析し、それぞれに対して「a.さらに思考が深まるように」「b.自分の解決に自信が持てるように」「c.支援をもとに自分の考えが持てるように」とする視点から具体的な支援策を指導過程に位置づける。
2)個のよさを生かす練り上げ
次の四つの視点から検討を加えていく。
○妥当性の検討(正しいかどうか)
○有効性の検討(よさの発見)
○共通性の検討(共通点、相違点)