教育福島0200号(1997年(H09)01月)-021page
効であったと考える。しかし、必ずしも効果があったとは言えない支援もあり、児童の予想される反応をいかにとらえ分析するかが重要となってくる。
資料3 自力解決の個に応ずる支援と評価例(第5学年『四角形と三角形の面積』)
2)個のよさを生かす練り上げ
低学年では、一人一人の考えを発表させる場を大切にした結果、自他の考えを低学年なりに比較できるようになってきている。中学年では、自他の考えを視点にそって比較できるようになってきている。高学年では、話し合いの視点を明確にすることで、話し合いが活発になり、解決方法の算数的なよさに気付く児童が増えつつある。
(2)基礎的な知識や技能を習熟する場
どの学年も、本時で獲得すべき事項の定着に努めてきた。しかし、自力解決や練り上げの段階で時間を超過し、習熟のための時間が十分にとれない場合もあった。二時間扱いにしたことで十分に習熟が図られた実践もあり、この段階の時間をどのように確保していくかが課題として残った。
2 基礎的・基本的な内容の分析について
一覧表にしたことによって「量と測定」における学年間の系統性をとらえることが容易になった。また、指導内容の精選・重点化を図ることが可能になるとともに、次学年の学習の素地となるような発展的な内容にも触れさせることができた。
3 諸調査に見られた変容
(1)意識調査 省略
(2)標準学力検査
全学年の「量と測定」の結果を通過率をもとに比較すると、全国平均通過率を大きく上回る結果を得た。また、他の三領域についても同様の結果を得た。算数科の基礎学力は確実に向上していると言える。
六 研究のまとめ
1 成果
(1)指導過程の中に、「基礎的・基本的な内容を獲得する場」と「習熟する場」を明確に位置付けたことにより、本時の学習内容を確実に習得させることができるようになってきた。
(2)自力解決において、児童一人一人が自分なりの方法で課題を解決しようとする意欲的な取り組みが見られるようになってきた。
(3)児童の反応をあらかじめ予想・分析し、支援の方法を明確にしたことによって、解決の糸口をつかませたり、より発展的な解決方法へ導くことができた。
(4)練り上げの場において、多様な考えの比較・検討に努めてきたことにより、自他の考え方のよさや違いに目を向けたり、算数のよさに気付いたりする児童が増えてきた。
(5)単元の基礎的・基本的な内容を分析し、系統性を明らかにした指導の取り組みは、毎時の指導内容の精選・重点化を図る上で有効であった。
(6)学力検査の結果から、本校全体の算数科の学力が確実に向上してきていることが言える。また、「量と測定」領域に絞った研究であったが、他領域にも良い成果をもたらした。
2 課題
(1)自力解決における児童の反応の予想とそれに対する具体的な支援策については、さらに深い教材研究と実践を積み重ね、工夫していく必要がある。その際、自力で解決しようとする主体的な意欲を削がないように支援していかなければならない。
(2)一人一人の解決の方法やそのよさを生かしどのように練り上げていくか、その方法について、さらに研究を深めていかなければならない。
(3)「基礎的・基本的な内容を獲得する場」と「習熟する場」の展開にあたっては、本時のねらいによって弾力的な時間の運用をしていかなければならない。また、二時間扱いの授業を導入するなど、単元の指導計画を見直すことも必要である。
(4)基礎的・基本的な内容を定着させるための指導形態や教具の工夫、視聴覚機器を活用した授業に取り組んでいきたい。
以上、これらの課題解決に向けて平成八年度は「数と計算」の領域において継続研究中であり、今後さらに研究を深めていきたい。