教育福島0200号(1997年(H09)01月)-022page
豊かな活動や体験を通して生き生きと学ぶ子供を育てるにはどうすればよいか
−駒板分校生活科の実践−
郡山市立富田小学校教諭 大槻誠
一 はじめに
平成八年四月末「駒板分校から本校に通い始めた四名の子供たちは、皆新しい学級にも慣れ、早くも集団をリードしています。五名の子供で生活してきたとは、思えないですね。とても頼もしい感じがします。」と新しい担任から一通のハガキが私のもとに届いた。このハガキを前にして、一年前に始まった生活科授業改善に向けての取り組みが、脳裏に浮かんできた。一年間、子供たちと多くの地域の方々と教師が一体となって活動した生活科の授業を振り返っていることにする。
二 研究主題設定の理由
(1)分校の今日的課題から
郡山市立御舘小学校駒板分校は、児童数五名、教師一名の極小規模分校である。地理や気候面からくる悪条件、さらに複式学級であることから、子供たちはさまざまな特性を抱えている。その特性として、
〇人と接する機会が少ない。
〇依頼心が強く、積極性や計画性に乏しい。
〇表現力を駆使する体験が少ない。
〇感動や疑問を持つ体験が少ない。
などをあげることができる。子供たちはやがて三年生になると、本校に通うことになる。すなわち、今とは異なる環境の中で生活していかねばならないのである。このような環境の変化に主体的に対応できる子供を育てること。それが五名の子供たちを目の前にして、今、解決しなければならない課題である。
(2)生活科とのかかわりから
環境の変化に主体的に対応できる子供とは、自分に『自信』を持ち、集団の中で自分らしさを出して生活できる子供といえるのではないだろうか。そのような自信を持つ子供は自分自身について気付かせる活動を通して、育むことができる。これは『自分』を中核に据える『生活科』の学習そのものであると考えた。
三 主題について
(1)『豊かな活動や体験』を行うために
今までの生活科の反省に立ち、子供の思いや願いを大切に、家庭と地域の協力のもと、生活圏である地域環境に積極的に働きかける必要があると考えた。(地域素材の教材化)
(2)『生き生きと学ぶ子供』を育てるには
まず教師のかかわり方を見直し、「子供が何を思い、願うのか」を見取り、教材を通して、「この子に何を育てるのか」を明らかにした上で適切に支援していく必要がある。子供が持つ力を発揮できるよう、支援と評価の充実を図ることにした。
図1 教材化の視点
四 研究の見通し
そこで、主題に対する見通しを次のようにおさえた。
生活科の授業改善に向けて、次の点に重点をおいて、豊かな活動や体験を取り入れた学習を進めれば、自らが持つ力を発揮し、自信を持って活動する子供が育つであろう。
【授業改善の視点】
〇地域の特性を生かし、素材の教材化を図る。
・思いや願いをもとに直接体験を生かす学習過程の工夫