教育福島0200号(1997年(H09)01月)-030page

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図書館コーナー

平成八年度

福島県公共図書館の動向

 

毎年、県内公共図書館の動向について報告していますが、ここ数年、″図書館建設気運の高まり″に反して、″資料費は伸び悩み気味″と、あまり活気のある内容のものではありませんでした。しかし、図書館ではいよいよ資料費の削減も限界に近づいたようで、昨年度の人口一人当たりの資料費は、一昨年度の資料費を十九円近くも上回る二百二十九・一円と大幅な伸びとなりました。これは、バブル絶頂期であった平成五年度の二百五十六・一円に次ぐもので、資料費の不足とあいまって、年々落ち込んでいた貸出についても、来年度はきっと気持ちのよい報告ができることと期待しているところです。

 

頑張っている図書館

 

さて、その貸出についてですが、昨年度の県平均は若干減少しています。しかし考察するところ、この主な原因は、須賀川市図書館の電算導入準備のための休館によるものと考えられますので、ある程度仕方のない数字と捉えています。

須賀川市図書館は、この数年資料費でも貸出冊数でも大きな伸びを示しており、昨年度も、利用統計において大きな躍進が期待されていましたが、常に新しいサービスを展開している同図書館では、平成八年度の稼働を目指し、コンピュータの導入を決定、その導入作業の関係上長期にわたる休館をしました。県内の大きな図書館の一つとして位置する同館の実績は、県内の統計に影響をもたらす結果となったわけです。

図書館におけるコンピュータの導入は、資料やデータの整備、システムの設計など多くの準備が必要であり、新しくできる図書館のコンピュータ化も大変なことですが、何万冊もの既存図書を持つ図書館がコンピュータ化事業に着手し、なおかつ、たった一年で導入してしまうということは、本当に驚かされることなのです。

貸出冊数減少の要因はこの他にも幾つか考えられますが、時代の変化とともにいろいろな要因が出てくるのは当たり前のことでもあり、資料費を削減されている現在の状況を考えますと、総じて公共図書館はよく頑張っていると思えるのです。

 

公民館図書室は減少

 

これに反して、公民館図書室は資料費、貸出冊数ともに減少の一途を辿っています。

児童をターゲットの中心に据えてのサービス展開を行えば、かなりの実績を見ることは可能であると考えられますが、如何せん子供の減少、利用の低年齢化などにより、児童サービスは依然として頭打ちの状態となっています。その結果、利用の減少が資料費の減少につながり、職員も図書室運営に無関心になるという悪循環を生んでいるような感じを受けます。

それではサービス対象の枠を大きく広げればということになりますが、そこに十分な資料費や人員が導入できなければ、多様で高度な要求に応えていくことは難しく、これもまた厳しいという感は否めません。確かに頑張っている公民館もありますが、図書館と公民館図書室との格差の広がりは事実なのです。

こうした状況もまた要因の一つなのかもしれませんが、多くの町村で住民ニーズの上位に図書館建設の要望が出ていると聞きます。そして現実に、昨年度の東村、今年度の大熊町と町村図書館が相次いで誕生。さらに来年度には、二町村で図書館がオープンする予定になっています。

近年の図書館は、本を貸し出すだけではなく、ビデオやCDの貸出し、お話会や映画会の開催、あるいは調べものの手伝いをしたりと幅広いサービスを展開しています。こうしたサービス形態の変化も、結局は住民に対するきめ細かい柔軟なサービスということが根底にあっての、必然的なことであると言えます。図書館も公民館も、生涯学習などと大上段に構えず自然にというところでしょうか。

 

 

 


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