教育福島0200号(1997年(H09)01月)-037page

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工夫により、身の回りの自然や素材に目を向けるようになり、他の活動でも自然素材を生かした造形表現活動がみられた。

また、子供の興味や関心、意欲を喚起し、ねらいを明確にした題材を開発した。さらに、子供の実態や発達段階を考慮した課題を盛り込んだことにより、課題解決に向け意欲的に活動できるようになってきた。

〇教師自身が試作品を製作することにより、子供が活動する上でのおもしろさや難しさを実感することができ、指導に生かすことができた。また、子供の多様な発想や表現方法を尊重する姿勢がさらに強くなった。

〇学習カードで活動内容を確認することにより、各段階ごとに何をすべきかが明確になり、見通しをもって活動できるようになってきた。

また、各時間ごとに活動に対する自己のめあてを立てて取り組むよう働きかけた。その結果、自分自身の活動を振り返るようになり目的意識をもって意欲的に取り組むようになってきた。

〇構想の段階にアイデアスケッチを位置づけることにより、自分なりの漠然とした発想を形に描き出すことで、ある程度明確にすることができた。

〇個人カルテによって各時間ごとに子供の実態を把握しながら、子供の反応を予想し、具体的な支援を考えて授業に臨んだ。その結果、子供の活動の様子がよく見えるようになり、不要な言葉かけも少なくなった。また、子供の活動も停滞することが少なくなり、その子なりに集中して取り組めるようになった。(資料2)

 

資料2 個別支援の側

 

個別支援の例

1)なかなか活動に取りかかれない子(児1)

「どんなモビールをつくるのか、アイデアスケッチをもう一度見てごらん。」

「小枝はどのくらいの長さに切るのかな?手て押さえてごらん。」

2)用具の使い方につまずいている子(児1・3)

「どこを切りたいのかな?先生と同じようにやってごらん。」

「押さえてあげるから切ってごらん。」

3)つり合いがうまくとれない子(児1・3・5)

「どちらにずらしたらつり合うかやってごらん。」

「飾りもつけて重くしてみたらどうかな?」

4)活動が嫌になりがちな子(児2・5)

「よくできてるね。ここもしっかりつなぐとよくつり合うよ。」

「けがをしないように、ゆっくりやってごらん。」

5)自分の表現に自信の持てない子(児1・5)

「○○がすごくいいね。次はどこをどうするのかな?いいかんがえだね。」

6)自分の思いどおりに表現できている子(児2・3・4・6)

「もっと工夫したらいいと思うところはないかな?」

 

〇個人カルテによって題材を通した個のよさを評価していくことにより、指導と評価の一体化を図ることができた。(資料3)

資料3 個人カルテ

 

してあげることによって、自分の作品や活動に自信がもてるようになってきた。

 

〇学習カードの自己評価に対して教師の評価や賞賛、励ましの言葉を朱筆で返してあげることによって、自分の作品や活動に自信がもてるようになってきた。

〇子供の自己評価や相互評価、教師による共感的な評価により、成就感や満足感を味わえるようになり「自分らしさ」と友達の「その子らしさ」に気づけるようになってきている。

(2)課題

〇子供の「自分らしさ」を裏づけるその子なりに好きな色や形、感じなど、または、その子にとって表現しやすい気に入った方法や技術などの造形的な価値観を把握する必要があった。その子なりの「造形的なものの見方や考え方」をとらえること、情意面を把握するために短作文などを活用することも考えたい。

〇つまずいた子供に対する具体的な支援は効果的であったが、自分の思いに対し、安易に妥協して表現する子供への配慮にやや欠ける面があった。さらに発想を豊かにしたり、表現の幅を広げたりして「自分らしさ」を伸ばしていく手立ても考えていく必要がある。

〇教師による個人カルテの記入の負担が大きい。人数が増えても実施できるように、適切かつ簡潔な形での改善が必要である。

 

 

 


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