教育福島0201号(1997年(H09)02月)-019page
失敗は成功のもと
正木全道
「失敗は成功のもと」という言葉があります。やや言い古された感のある言葉ですが、現在では仕事や人生のちょっとした失敗を慰める意味で日常茶飯事に人々の口をついて出る言葉になっています。しかし全人生を賭けて物事に取り組んでいる人にとって、取り返しのつかない失敗が大きな飛躍のきっかけになったとき、この言葉は日常の慣用句の持つ軽いニュアンスとは異質な、肚にずしんとくる重い意味を持ちます。
つまり、この言葉が現代の人々になんらかの力を与え、心の中で生き続けているのかと考えると疑わしい気がしています。なぜなら、いまの人たちは失敗を極端に恐れるからです。そしてほとんどの人が失敗をすることが恥であると思っているのです。唯物的価値を絶対のものと考える現代の競争社会は、人々に強烈な自己防衛本能を強いています。その結果、猛烈な受験戦争に勝ち残り、いい大学、いい企業に入ることが、人生を失敗しない一番の近道であるかのように思われてきました。人生を無難にやっていこうとする防衛本能は、人々からみずみずしい感性や生きる活力を奪い去ってしまったのではないでしょうか。
天才といわれた世界の発明王トーマス・エジソンは「一パーセントのひらめきと、九十九パーセントの汗」と、自身の人生を評しています。エジソンは何万回という失敗を繰り返して、生涯に千九十七の発明を世に送り出しました。特に彼が苦しんだのが白熱電灯の発明だったといわれています。実験回数が二千回以上にも及び、日々失敗の連続で助手が「もうがっかりだ。嫌になってしまった」と弱音を吐いたとき、エジソンはこう語ったといいます。「失敗によって、みんな何かを学んだはずだ。確実なのは、この方法では駄目だということがわかったことだ。失敗は一歩成功に近づいたということなんだ」エジソンにとって、失敗は発見でもあったのかもしれません。
つまり、失敗を重ねる度に、成功に近づいているという確信をエジソンは持っていたのでしょう。しかし、いまの子供は、生活のあらゆる面で無駄と思われることは徹底して排除されてきたので逆に言えば、失敗を犯す余地さえないのかもしれません。「ほんの一瞬でもよい。自分で何かすること、試してみることは、見たこともないものについて、二時間も教わるよりはずっとましだ」エジソンのこの言葉がすべてを物語っていると思います。
「失敗は成功のもと」-これは不変の真理を言い当てた言葉ではないでしょうか。
(いわき市立平第一中学校PTA会長)
みんなでマーチング
西尾美香子
「見てくださる人々に感動を与えるマーチングをしたい」
平成八年四月、六十二人の子供たち、一緒に指導してくださる先生方と、今年度のマーチング部活動がスタートしました。
マーチングは音楽に体の動きを加えた表現活動です。演奏の練習、動きの練習、そして、それらを組み合わせた練習を繰り返し行います。
練習にあたって私たち指導者が繰り返し子供たちに言ってきたことは次の四つのことでした。
「返事、あいさつをすること」
「時間を守ること」
「仲間を大切にすること」
「短い時間でも毎日練習を続けること」
これらはすべて当たり前のことのようですが、こうした当たり前のことの積み重ねが、良いチームワークを生み出してきました。マーチングは決して一人ではできません。全員の心が一つになってこそ初めて、人々に感動を与える演奏、演技ができるのだと思います。
しかし、毎日の練習を続けていくことは、決して楽なことではありません。部員の中には、練習中、涙を流したり、辛くて止めてしまおうと思った子供たちがきっといたはずです。同じ目標を持つ仲間がいたから、共にがんばる仲間がいたからこそ、続けてこられたのだと思います。