教育福島0202号(1997年(H09)04月)-010page

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き合い、自己を見つめることが大切になるが、ややもすると、固定化した画一的な指導をしがちで、本時に学習する道徳的内容に対する課題意識や資料への興味・関心の喚起がなされなかったりすることが見られる。

新しい学力観に立つ授業の実現は子供自身の価値観の育成と密接にかかわるものである。子供たちに自ら考え判断し行動することを求めても、そのことの大切さを子供自身が自覚しないと実現することはできない。そこで、次の観点から授業を見直し児童生徒が興味・関心をもって主体的に取り組めるよう、創意工夫していくことが求められる。

○ねらいの設定に当たっては、児童生徒一人一人が道徳的価値にかかわって自らのよさや可能性に気づき道徳の内容を内面的に自覚するとともに人間としての生き方を十分に考えられるようにする。

○価値の内面的自覚を図る指導過程を十分理解するとともに、指導を「展開−−導入−−終末」の順に構想してみるなど、各段階でのねらいや時間を考慮した柔軟な授業づくりに努める。

○実態把握や道徳的実践への意欲づけなど指導過程の一部を授業の事前や事後の指導に位置づけたり他の教育との関連を図った学習を構想するなど弾力的に取り組む。

○一つの内容項目に関連する主題を一つの単元のようなとらえ方をし、各教科などでの学習や日常生活、家庭や地域社会での生活との関連を図りながら、道徳学習が総合的に行われるような指導を工夫し、児童生徒一人一人の実践意欲に結びつけるようにする。

(2) 多様な指導方法を工夫する

児童生徒の側に立った道徳の授業を展開していくには、まず、よさを認め励まし伸ばす指導を充実させていくことが大切である。さらに、興味・関心や意欲を高め、児童・生徒自身が道徳的価値について感じたことや考えたことを、自発的に伸び伸びと発表したり表現したりする学習活動を吟味し、ねらいとする価値の内面化を図ることが望まれる。

○実物の提示など資料に対する問題意識や追求意欲を喚起する工夫

○先行オーガナイザー法(県教育センターの研究成果による)など資料に描かれている道徳的問題や課題に対する児童生徒の豊かな反応を引き出す資料提示の工夫

○場面絵、視聴覚機器などの効果的な活用や構造的、視覚的板書など資料の場面状況を構造的に把握させるべき価値を明確にする工夫

○児童生徒の道徳的価値をゆさぶり、多様な価値観を引き出す発問の精選・吟味

○児童生徒が価値の追求・把握を効果的に行えるような指導形態や学習方法の工夫

・意図的指名、相互指名など各段階のねらいに沿った指名の工夫

・パネルディスカッションやディベートなど児童生徒が意欲をもって取り組める話し合い活動の導入

・事前、授業中、事後の考えの推移がわかる学習シートや変容が確認できる道徳ノートの活用

○動作化、役割演技など授業の活性化につながる作業的、体験的学習活動の工夫

(3) 道徳教育における評価

道徳教育の評価の考え方については、「各教科における評価と同様な評価を道徳の時間に関して行うことは適切でない。」と明記されている。道徳性の評価は、人格の全体にかかわるものであり、不用意な評定をしてはならないのである。児童生徒の道徳性を評価する意義は、指導を通してどの程度成長したかを明らかにすることである。そのために道徳性の評価は、教師自身が児童生徒の道徳性をできるだけ客観的に見る目を養うとともに、児童生徒の人間的な成長を見守り、そのよりよく生きようとする努力を信じ、願い、勇気づける姿勢をもち、信頼関係に基づいた共感的な理解を伴う評価が必要であり、長期的・多面的かつ、総合的に行い指導に生かせるようにすることが大切である。

 

三 豊かな体験の場の設定と充実

 

道徳教育における豊かな体験とは豊かな心の育成にかかわる体験であり、道徳的価値を内面に自覚したり行為として表すことのできる体験である。

子供たちの日常の生活においては、道徳的な価値判断を求められることや、道徳的な心情をゆさぶられたり、人間としての在り方や生き方を考えさせられる場面は常に存在している。それに対して豊かに反応して自ら解決しようと考えたり、判断しようとしたりする内面的な心の動きが道徳性を生むことになり、そのためには豊かな体験が必要となってくる。

学校教育全体で実現される豊かな体験活動は、それぞれの独自のねらいをもっている。それらのねらいを道徳の価値内容とのかかわりで捉え直しておくことは、子供たち一人一人の道徳性を、より広く育むような指導をする上で重要になる。それは、

 

 

 


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