教育福島0202号(1997年(H09)04月)-011page
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体験活動を通して道徳的課題が浮き彫りにされたり、道徳の時間で育成された道徳的実践力が自然な形で日常の道徳的実践に結びついたりしているからである。
(1) 道徳の価値内容との関連
○道徳の価値内容の四つの視点と体験活動の関連を見直した場合、内容項目全体にわたる調和的な体験活動の場や機会が確保され、道徳的実践を通して道徳性の確かな育成が図られているか。
○教師と児童生徒との尊敬と信頼関係を基盤に、児童生徒相互の認め励まし、助け、学び合う場と機会が積極的に設けられているか。
○豊かな人間関係を基盤とした様々な学習活動や体験活動の中で学級や集団のために働く場や機会があるか。
○学校や学級の支持的風土の中で他を思いやる機会はあるか。
○道徳的な環境や自然環境、人間関係の中で感動する場や機会があるか。
(2) 家庭や地域社会との連携
道徳教育を充実するには、家庭や地域社会との連携を積極的に図るとともに、一貫した道徳的実践の指導ができるようにしていかなければならない。さらに、児童生徒の日常生活のあらゆる機会や場において行われることを共通に認識することが必要である。そのような中で、子供たちが、学校で組織的、計画的に学習する一方、地域社会の中で様々な生活体験、社会体験、自然体験を豊富に積み重ねることは大切である。これらの体験活動は、子供たち自らの興味・関心や自らの考え方に基づいて行っていくという点で、道徳的価値と深くかかわっており、大きな意義をもっている。
豊かな体験をとおして、一貫した道徳的実践の指導ができるようにするためには、次の観点からの見直しが必要である。
○家庭や地域社会における様々な体験や行事などを学校の道徳教育と結びつけて道徳的実践の場を広げる場や機会はあるか。
○学校、家庭、地域社会の三者の連携を確立するために、共通する道徳的課題を明確にできる場や機会を確保したり、一貫性のある体制を確立しているか。
(3) 道徳的実践意欲を高める環境整備
教育は環境を通して行われる。ある意味では学校教育のすべてが環境教育である。この場の環境とは、言うまでもなく単なる物的環境を指すばかりでなく、すぐれた人的環境も含まれている。児童生徒と教師、児童生徒相互、さらには学校、家庭、地域社会相互の人間的信頼関係の育成は、道徳的実践意欲を高め、豊かな心を育む道徳教育を推進するうえでは不可欠なものである。
○教師と児童生徒、児童生徒相互の好ましい人間関係を育てるとともに、認め合い、励まし、高め合う雰囲気づくりや支持的風土を育てていくことが必要である。
○教室や校舎、校庭などの環境整備に努め、内面に根ざした道徳性の育成を図り、道徳的実践意欲を高めるのに役立つようにする。
四 いじめ問題に対する道徳教育のかかわり
いじめ問題への対応として、教育活動全体をとおして、生命や人権を尊重する心を育むとともに、お互いの個性を尊重し、差異を認め合う態度を育成することや、円滑な人間関係の育成、個々人の個性や価値を尊重する態度、社会性の涵養に配慮していかなければならない。これらの配慮事項のうえに立ち、道徳教育計画の中に、思いやりや人間尊重、生命の尊重、集団生活の向上など人間としての在り方や生き方にかかわる内容を重点的、系統的に取り上げ、指導の充実に努めることが大切である。
いじめ問題を道徳の時間でとり上げる場合、次の点に留意して取り扱う必要がある。
○いじめ問題の根底にある思いやりの心について考えるといった道徳的価値にかかわる部分の指導に重点を当て、人間としての在り方や生き方の問題を話し合い、道徳的価値を深く自覚させるとともに、態度化に結び付けていけるような指導が重要である。
○人間関係においては、一方の立場だけで考えるのは不十分であり、役割演技において役割交代を行うなどお互いの立場で考えられるように指導過程を工夫する。
○深く人権にかかわりがあり、互いの人格や人権を尊重する心、他人を思いやる心の育成を図るために、人権問題の学習からも取り組むなど、各教科、各領域との横の関連を図り、道徳の時間の指導をとおして、補充、深化、統合を図る。
さらにいじめ問題については、道徳の時間を中核としながら、家庭や地域社会での道徳学習といかに関連を図っていくかが大きな課題である。課題解決のためには、家庭や地域社会への啓蒙活動を活発に行うなど積極的に真の連携協力関係を基盤として一貫した道徳的実践の指導ができるよう工夫していくことが重要である。
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