教育福島0202号(1997年(H09)04月)-014page
道徳教育の充実
心を育む
養護教育課
自分自身への手紙
Aさんこんにちは。自分自身への手紙となると、伺を書いていいか良く分かりませんが、自分へのストレートな気持ちを伝えます。
(中略)
あらためて入院して、心配してくれる家族やB中学校の友達の気持ちがわかったよね。学校の友達にだって会えないし、病気持ちのあなたに対して、すごくやさしくしてくれたり、こまめに手紙をくれたりするでしょう。今回の入院で私自身、友達のやさしさや家族の気持ちが前回以上にあなたの心に伝わってきたはずです。
Aさん、あなたはまだまだ退院は無理でしょう。その間にできた友達や分校の先生たち、そしてあなたの病気を一生懸命少しでも治そうとしてくれているお医者さんや親の心を絶対忘れないでください。今のあなた、そして自分自身はそういうみんなに支えられて生活しているのだから。
もし退院しても、入院生活中の気持ちを大切にしていってほしいと思います。
病気のことを「イヤダ、イヤダ」とばかり思わないで病気になったことで得たもの、そのことによって変わっていった自分自身を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
短い手紙になりましたが、このへんで終りたいと思います。
体を大切に…。
〈C養護学校の文集より〉
この作文を読むと、病気と闘う日々の中で、しっかりと自己を見つめ、友人や家族、周りの人たちとのかかわりを大切にしている作者の素直な気持ちが伝わってきます。
盲・聾・養護学校に学ぶ児童生徒は、日々様々な障害や病気と向き合って生きています。
心を育むには、一人一人の心に寄り添い、「今大変だね」「よかったね」と語りかけ、児童生徒と共に一喜一憂するところから始まります。時には話の聞き手になったり、楽しい活動を一緒に体験したりすることにより、児童生徒と教師が共に理解し合える関係づくりが基盤になります。
盲・聾・養護学校における道徳の目標、内容等については、小・中学校における道徳の目標、内容等と同様ですが、盲・聾・養護学校の場合には次の二つの独自な事項が示されています。一つは、心身の障害に基づく種々の困難を克服して、強く生きようとする意欲を高めることにより、明るい生活態度を養うとともに、健全な人生観の育成を図ること、二つは、経験の拡充を図ることによって、豊かな道徳的心情を育て、広い視野に立って道徳的判断や行動ができるようにすることの必要性です。
盲・聾・養護学校の中で、小・中学校に準ずる教育課程で履修している児童生徒は、小・中学校における道徳の目標、内容に準じて道徳の時間における指導をしていますが、障害の状態等に即して、人間的な成長をどのように図り、どのように道徳性を育成するかという観点から「幾つかの内容項目」を関連づけて指導しています。また、精神薄弱養護学校では、領域・教科を合わせた指導の中で、道徳の内容が適切に含まれるように計画し、全体として道徳教育の目標が達成されるように配慮して指導しています。
子供たちの人間らしい豊かな心を育てていくために、次の観点からの取り組みが大切です。
人間としての在り方や生き方を考える心の教育
児童生徒によっては、突然の事故や病気により、今までの生活とは全く違った環境で生活することになったり、深刻な課題に直面したりすることも少なくありません。
したがって、今までの生活を振り返ることよりも、今をいかに充実して生活するか、この先いかに生きるかといった未来志向の考え方に立って支援していくことが大切です。
〈指導に当たっての留意点〉
○学校生活全体の中で、児童生徒が自主的、主体的な活動を通して、豊かな自己実現が図られるようにすること。
○主題の設定に当たっては、児童生徒の経験を考慮し、重点化を図ること。
○児童生徒の心情に訴え、登場人物