教育福島0202号(1997年(H09)04月)-016page

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方を見つめる内容

カ 重度の障害のある児童生徒との校内交流活動に関する内容

 

2 心の教育と教科指導との関連

 

病弱養護学校の児童生徒の中には、病気療養のために長期間欠席したことにより、あるいは不登校による欠席のために学習空白を伴っていることが多く見られます。

学習空白は学習が遅れるばかりでなく、学習意欲の低下につながります。特に算数、数学、国語、外国語等のように内容が系統的な教科などにおいては深刻な問題となります。特に不登校の状態にあった児童生徒は学習空白の期間も長いことが多く、「分からない」「できない」と教科学習に対して強い不安感や劣等感をもっていることがあり、ますます自分を否定的にとらえてしまいがちです。また、高等学校への進学を希望する中学生には、現実的な大きな問題でもあります。

そこで、教科学習の指導では、「知る楽しさや発見する喜び」を大切にし、情緒の安定を図りながら、学習に意欲と自信をもたせるため、次の点に配慮しています。

 

(1) 一人一人の学習空白の状態や心理的な問題に配慮したかかわり方を重視した指導の工夫

1) 基礎・基本を重視した分かりやすい教科指導の工夫

2) カウンセリングマインドによる言葉かけや働きかけの工夫

3) 自信をつけさせる評価の工夫

 

(2) 生きる力に結びつけるための指導の工夫

1) 体験的学習を通した生活手段の体得

2) 自分の力で課題を解決する場面の設定と支援

3) マルチメディアを活用した総合的学習の工夫

 

3 ふれあいを広げる交流活動

 

心理面の自己コントロールができるようになっても、実際の社会生活で具体的に実践できなければ、社会参加・自立の意欲は高まらないと考え、積極的に地域社会との交流を図っています。

 

(1) 高等学校との交流活動

須賀川桐陽高等学校の生徒とスポーツやゲーム等を通してふれあいを深めたり、須賀川桐陽高等学校主催の芸術鑑賞会に高等部生徒が参加するなどして交流を深めています。

 

(2) 地域との交流活動

学校の所在地の芦田塚町内会や国立療養所福島病院等の協賛を得て、毎年「夏まつり」を実施しています。

この行事は、二十年来の地域との交流行事で、交流校の須賀川桐陽高等学校の生徒を始め病院関係者、地域の方々も多数参加しています。この行事では、児童生徒が自主的に企画や運営に取り組み、高校生と一緒に模擬店等を運営したり、地域の方々とのふれあいを深めたりしています。

 

(3) 学校行事での交流活動

昨年実施した「いきいきふれあいフェスティバル」では、多くのボランティア団体や地域の人々、小・中学生及び高校生との交流が展開されました。様々な活動を通して、児童生徒たちは自信をもって自主的に活動に参加していました。

 

三 取り組みの成果

 

不登校傾向を示す児童生徒の多くは、過去の学校生活や家庭生活等の体験の中で様々な心理的問題を抱え、否定的な自己像が形成されてきているため、学校教育全体の中で、肯定的に自分を見つめ、自分の良さを再発見させる指導に取り組んできました。

これまでの取り組みを通して、児童生徒たちの心理的問題は徐々に改善され、本来の姿を取り戻し、一人一人の個性や良さが引き出されてきています。

児童生徒の主な変容としては、

1 自分が変わる可能性のあることを発見し、努力しようとする態度が育ってきていること。

2 消極的な姿勢から物事に主体的に取り組むようになってきたこと。

3 自己中心的な考え方から柔軟な考え方ができるようになってきたこと。

4 自己の存在価値を素直に認めることができるようになってきたこと。

などが上げられます。

 

四 今後の課題

 

これまでの取り組みを通して、否定的な自己から肯定的に自分を見つめられるようになり、自分の良さを見つけ、自信を持って生活できるようになってきていますが、時として頭痛や腹痛等の身体症状を訴えたり、人間関係で悩んだりして再び不登校傾向を示すことがあります。

このような児童生徒の指導に当たっては、日常生活での変容を的確に把握して心理的問題の解決方法を援助することが必要です。

また、学校と家庭との連携、学校と医療の連携を十分に図りながら指導・援助を根気づよく行うことが大切です。

特に、家庭との連携は、日常的に児童生徒を支援するために必要であるとともに大切な課題です。

 

 

 


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