教育福島0203号(1997年(H09)06月)-014page
また、普通学級と重複障害学級などの数の割合を見てみると、おおよそ一対二となっており、障害の多様化とともに重度・重複化しています。
なお、通学の形態も、自宅から通ってきたり、寄宿舎から通ってきたり、心身障害児総合療育センターから通ってきたりとさまざまです。
このように、児童一人一人の実態や生活環境が違う中で、本校で取り組んでいる生徒指導の在り方、特に教育相談について述べていきます。
注 床上(しょうじょう)学級 病院(療育センター)の児童生徒などのベッドサイドで、授業を行う。
センター内学級 療育センターに設置されている「教室」で授業を行う。
訪問学級 児童生徒の家庭などに訪問して授業を行う。
(2) 教育相談の実際
各学部を横断して、生徒指導部を組織しており、『問題』と思われることが生じた場合、担任や当該学部だけで解決するのではなく、全職員で対処することにしています。これは、指導の一貫性の点からも有意義だと考えています。また、家庭や施設などとの連携をもとに、児童生徒一人一人の個性を生かす指導ができるように、次のような実践をしています。
(一)「教育相談週間」
(児童生徒と学級担任)
全校児童生徒を対象として、期間を決めて行います。個別での相談を原則としています。
(二) 「各学部別の定例考察会」
(学部ごとの全教師)
年二回、全校児童生徒を対象とした定例考察会を開いています。必要に応じて、学部会でも、臨時に考察会を開くこともあります。
(三) 「心身障害児総合療育センターとの相談会」
(保母と学級担任)
学級担任が、相談を必要としたとき「連絡票」を学校の係に提出し、係が窓口になって、日時の調整を行います。必要に応じて、療育センター内の医師や訓練士などとも相談する場合もあります。また、療育センターから申し込みがある場合も相談会は開かれます。
(四) 「寄宿舎との相談会」
(寮母と学級担任)
学級担任が、相談を必要とした時には担当寮母と連絡を取り合い、随時行っています。
(五) 「保護者との教育相談」
(保護者と学級担任)
個別相談日を設け、実施しています。
(3) 今後の課題
いままで、述べてきましたように児童生徒一人一人の課題を的確に把握するために、学校内だけでなく、他の機関との連携を取り合っていますが、今後解決すべき課題もいくつかあります。
(一) 教育相談日の調整の工夫
学校、寄宿舎、療育センターそれぞれの勤務体制の違いから、教育相談日の設定が難しくなっています。特に急を要する場合はさらなる工夫が必要となっています。
(二) 考察会の持ち方の工夫
学部ごとの考察会も、限られた時間で、学部全員で真剣に話し合われるため、時間不足の感が否めなく、話し合いが深まり切れないという面が見られます。今後は、小ブロックなどに別れて、同じ児童生徒について何度も話し合う「小考察会」の設置も考えています。
五 おわりに
生徒指導の機能を学級活動、道徳の時間や各教科の指導の場はもちろん、学校生活のすべての場で十分展開させていくことが必要です。同時に、郡山養護学校の例にもありますように、家庭や施設などとの連携をもとに、児童生徒一人一人の個性を大事にした指導をしていく必要があるのです。
生徒指導は、児童生徒だけの問題でなく、それに対処する教師の姿勢がいつも問われているのだということを忘れずに取り組む必要があるのではないでしょうか。
図1
表1
指導の重点 努力事項 1 一人一人の課題の的確な把握に努める。 (1) 全職員の参画のもとに、小・中・高等部の一貫した全体構想、指導の重点、具体的な指導の計画を作成する。 (2) 生徒指導の機能を授業のみならず教育活動全体に生かすことができるようにする。 2 家庭や施設等の連携のもとに、個性を生かす指導ができるように努める。 (1) 指導に当たっては、個々の児童生徒の障害や発達段階、特性等を的確に把握するとともに、日常的な触れ合いをとおして悩みや希望をくみ取り、教師との信頼関係を深め、一人一人の自己実現が図られるよう援助する。 (2) 効果的な指導を推進するため、家庭や病院、施設の養育及び療育方針等を理解し、それぞれの実態を踏まえた連絡方法等を工夫するとともに、相互に補完しながら指導に当たる。