教育福島0203号(1997年(H09)06月)-023page
随想
日々の想い
ずいそう
そのひとことで
遠藤トヨ子
「先生、見てください」
のメモと一緒に"風"と言う題の一冊のエッセイが届いた。
二年のとき、ハーモニカが吹けなくてさ、
「おれ、できないよ」
と言ったら、本気になって、
「できないんじゃないの。やらないのでしょう。本気になってやってみな。できないっていう前に、夢中になってだれにも負けないくらいやってみな。M君にやれないことないんだから」
できたとき、涙を流して一緒に喜んでくれた先生。
その時は、何を言われているのか分からなかった。でも、何年かたった今、いろんなことで、諦めそうになったり、負けそうになったりすると聞えるんだ、あの声が。
忘れていないよ。諦めないこと、負けないこと、夢中になること。
教師は一人、児童は、何人、もしくは、何十人これが教室である。
ふと、こんな言葉が頭をよぎった。『その一言で励まされ、その一言で夢を持ち、その一言で腹がたち、その一言でがっかりし、その一言で泣かされる、ふしぎな大きな力を持つ、ほんのちょっとの一言』毎日、どの子にも温かい言葉をかけたかな。注意したけど、そのあと優しい態度で接したかな。
教師というのは、心のキャンパスに色を重ねていく仕事です。日々の会話から、つぶやき、驚きの声を耳にし教えられ励まされ、最高の絵になるように子供たちのその一言を大切に前進していかなければならない。
新卒で特殊学級を担任した。最初どのように接してよいのか皆目、見当がつかなかった。しかし、純真な汚れを知らない子供たちの生活を通して、笑顔、ひたすらに頑張ろうとする姿、優しい思いやりの心を教えられた。素晴らしい出会いに感謝している。
これからも、子供たちの長所が見える、子供の心の痛みが分る、子供に尊敬される教師にならん事を心がけ努力していきたいと思う。子供たちには一人一人かけがえのないよさがある。叱るよりほめろと言う言葉がある様に、よきを認めて、個を生かす学級作りをしていきたい。
先生、今どうしている?先生は変わってない?ずっとあのままでいてね。僕もあの時のままで会いにいくから。
M君のエッセイに、目をうるませ。
さあ、初心にかえって出発しよう。まわりの木々も輝いて見える。
(梁川町立梁川小学校教諭)
私と部活動
中山芳文
中学時代、陸上競技の練習が嫌いで逃げ回り、練習にほとんど参加しなかった生徒が、今、一教師として陸上部の顧問をやっていることが不思議です。
思えば、高校・大学と素晴らしい指導者に出会い、おかげで自分の人生が変わったような気がします。更に初任地で人間として、教師としてまた、指導者として大切な心得というものを学びました。その一つは、「生徒の立場・生徒の目の高さまで自分を下げて物事を考えなければいけない」ということ。そして、「教師は競技者ではなく、指導者である」という最も大切なこと。さらに「当たり前のことが当たり前にできる」ということ。これらの三つの他にも