教育福島0203号(1997年(H09)06月)-030page

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特集3

食中毒防止

スポーツ健康課

 

はじめに

学校給食は、児童生徒の健康を守ることが大きな目的の一つであり、提供される食事は栄養的な配慮はもちろんのこと、まず、安全であることが大前提となります。

平成八年の腸管出血性大腸菌O-157による学校給食における集団食中毒の発生によって、学校給食は、衛生管理や施設・設備、調理の在り方等すべてにわたり、その見直しと改善が迫られました。

平成八年度二学期の学校給食の開始の際には、この新種で感染力の強い細菌への対策として、NASAで開発された米国の衛生管理手法「HACCP(危害度分析重要管理点)」の概念が取り入れられ、作業手順に沿った「日常点検」の徹底が義務付けられました。

また、発症例の殆どが、感染源や感染経路が不明であることから、その解明を容易にするため、保存食や使用食材を収納するための冷凍庫(マイナス二十度、二週間保存)の設置や学校給食従事者の月二回の検便検査(赤痢、サルモネラ、O-157)を実施することとなりました。さらに、従前は衛生管理の面からの明確な指針等がなかった施設・設備についても、「学校給食施設・設備の環境衛生整備指針」が示され、これに基づく改善が行われました。

なお、本県においては、市町村教育委員会をはじめ各学校の衛生管理等の真摯な取り組みにより、食中毒の発生はありませんでした。

 

一 学校給食における集団食中毒の発生状況

 

【幼稚園】

別表のとおり

【小・中学校】

別表のとおり

※参考資料

「学校給食における衛生管理の改善に関する調査研究協力者会議」の実地調査から(抜粋)

〔E県F市〕

汚染経路については、調理過程において過熱後の食品を入れたザルを床に直接置いたこと等により、食品に菌(O-157)が付着し、水槽の共用により拡散され、さらに食品の加熱不足及び室温放置等により食品中で増殖したことによって発生したと考えられる。

〔O県P市〕

原因食のポテトサラダの原材料のうち、ジャガイモ、魚肉ソーセージ及びキュウリは、前日に下処理、調理が行われ、それらが十分冷却されないまま冷蔵庫に保管されていたとみられ、これらの過程で原因菌O-157に汚染され、菌が増殖したとみられる。

〔G県Η市〕

共同調理場で調理加工中に、調理器具等に付着していたサルモネラによって汚染されたと推察されるピーナッツ和えが、食中毒の原因食とされる。

 

二 主な発生要因

 

ア 最近多発している「腸管出血性大腸菌O-157」やサルモネラは、これまでの病原菌に比べて極めて小数菌で発症します。

・十〜百個程度で発症、通常の病原菌の一万分の一程度です。

イ 調理過程における二次汚染が考えられます。

・加熱後に病原菌が付着した場合その菌が急速に増殖する常温放置が原因となります。

・野菜と動物性タンパク質食品との和え物は小動物性食品が栄養源となって病原菌の増殖を促します。

・調理終了から喫食まで三時間以上経過している事例があります。

ウ 施設・設備の不備が原因となっている場合が考えられます。

・非汚染作業区域・汚染作業区域が区分されていないことが大きな原因となります。

・床面からの飛沫や手で開閉する手洗い設備により汚染が拡散します。

・食材、作業区分ごとの専用容器の不備により、二次汚染のおそれがあります。

・シンク(洗い場)の不足で下処理が不十分な場合があります。

エ 食中毒に対する危機意識の薄いことが誘因となる場合があります。

 

三 食中毒菌の種類と特徴

 

食中毒の発生は、細菌性食中毒が九割以上を占めています。食中毒の防止対策には、食中毒原因菌について熟知することが大切です。

ここでは、全国で発生した食中毒の原因菌のうち、上位を占める細菌及び平成八年に全国で猛威を奮った「腸管出血性大腸菌O-157」について、その特徴や症状及び予防対策について解説します。

ア 腸炎ビブリオ(「サルモネラ菌」と共に患者数第一位)

腸炎ビブリオは、一九五〇年大阪府でシラス干しを原因として起きた食中毒を調査した研究者によって、世界で初めて発見されました。

この菌は、食塩を好む好塩菌であり、三%前後の食塩を含む塩水を最も好みます。海水に生息し、海産魚介類が原因で食中毒が発生します。また、魚介類を調理したまな板・包丁などを介して他の食品に二次汚染

 

 

 


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