教育福島0203号(1997年(H09)06月)-031page

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し、それが原因で食中毒が起こることもあります。

日本は、四方を海に囲まれているため、昔から海産物を食してきた(特に生で食べる)食文化が根付いています。そのため、腸炎ビブリオによる食中毒は毎年発生件数の第一位を占めています。また、この菌による食中毒は夏季に多く発生し、冬期には殆ど見られないことから、海水の温度が関係しているといわれています。

潜伏期間は、十時間から十八時間で、急性胃腸炎症状を呈し、特に激しい腹痛と下痢を引き起こします。

この菌の食中毒対策としては、加熱はもちろんのこと、好塩菌であるがゆえに真水に弱いため、よく洗浄することが大切です。また、高温の下では、増殖スピードが非常に速いため、仕入れ後に冷蔵庫で低温管理し、調理後すぐに食べることも必要です。

イ サルモネラ菌(患者数第一位)

サルモネラ菌は、現在知られているだけでも約二、○○○種類もあり広く哺乳類、鳥類、爬虫類などの動物に生息しており、これらの肉を食用することにより食中毒が起きる場合が多いのですが、それ以外にもネズミ、ネコ、ミドリガメなどのペットが感染源になることもあります。

外国では、この菌による食中毒が第一位を占めており、日本でも食肉化が進み、この食中毒は増加傾向にあります。特に鶏肉、鶏卵は市販商品の二〇%〜三〇%が汚染されているといわれています。

症状は他の食中毒と同じですが、高熱を発生させるのが特徴といえます。この菌も熱に弱いため、卵をゆでると七分程度で死滅します。ただし、学校給食においては、手作りマヨネーズは使用できないこととなっています。

ウ 腸管出血性大腸菌O-157(患者数第二位)

一九八二年アメリカでハンバーガーが原因食品として起きた集団食中毒で、世界で初めて発見されました。

人間の腸内にいる大腸菌(常在大腸菌)は無害ですが、病気を起こす大腸菌を病原性大腸菌と呼んでいます。

特にO-157は「病原性大腸菌」、「ベロ毒素産生性大腸菌」ともいわれ、溶血性尿毒症症候群を引き起こし、死に至ることもある恐ろしい大腸菌です。

日本では、一九九〇年の埼玉県浦和市で発生した集団食中毒で園児二人が亡くなっています。このときは汚染された井戸水が原因でした。その後も散発に見られましたが、平成八年になぜ異常に発生したかは解明されていません。

この菌の特徴は、通常の食中毒菌は、数百万個から一千万個以上ないと発症しませんが、O-157は百個程度でも発症します。しかし、このように恐ろしい大腸菌も熱には弱く、七十五度一分間の加熱で死滅します。

エ カンピロバクター

カンピロバクターはヒト、家畜、魚介類、河川など自然環境に広く生息しています。特にウシ、鶏の保菌率が高く、また、イヌ、ネコ、小鳥などのペットの保菌率も高く、これらの排泄物や砂遊びをした子供から感染することがあります。

この菌は、酸素が十分にある好気的条件または酸素がまったくない嫌気的条件の下では発育できません。酸素濃度が五%前後の環境で最も発育する微好気性菌です。

この菌による食中毒は集団発生の率が高く、特に修学旅行、会社の寮、学校給食に多く見られます。

予防策としては、空気、熱、乾燥に弱い菌であることから通常の対策で防止できます。

オ ブドウ球菌

ブドウ球菌は、ブドウの房状の形をしているためこの名が付けられました。ブドウ球菌属は、二〇数種類確認されていますが、特に病原性が強いのが黄色ブドウ球菌です。

この菌は、ヒトの鼻咽腔、皮膚、腸間内などに常在しており、手指を介して食品が汚染されます。また、怪我の傷口、あかぎれなどの化膿した部分にも菌が付着しています。

ブドウ球菌は毒素(エンテロトキシン)を産生し、この毒素を摂取することにより食中毒が発生します。

この菌の潜伏期間は平均三時間と短く、また、エンテロトキシンは耐熱性(一〇〇度三〇分の加熱でも死滅しない)のため、菌は死滅しても毒素は生き残ってしまいます。

症状としては、腹痛や下痢を伴いますが、一般的には経過は良好で、死に至ることは殆どありません。軽度の怪我でも手袋の着用が必要です。

カ ボツリヌス菌

ボツリヌス菌は、嫌気性菌で酸素のないところでのみ生息するという特性があります。このため真空パック商品やビン詰等の商品で食中毒が発生することがあります。

また、一般の食中毒は、消化器症状を主としますが、この食中毒は、神経麻痺の症状を引き起こすため、死亡率が高く二〇%から六〇%にも及びます。

しかし、この強力な毒素も八〇度三〇分の加熱、あるいは短時間の煮沸で死滅します。

年間の発生件数は少ないですが、一九八四年に発生した熊本名産カラシレンコンによる食中毒では、十一人の死亡者が出ています。また、県内では南会津地方の郷土料理である「いずし」による食中毒が発生しています。

キ 小型球型ウィルス

集団食中毒の約二〇%は細菌が検出されず、原因不明とされていますが、その大部分は細菌性食中毒菌には分類されない小型球型ウィルス

 

 

 


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