教育福島0203号(1997年(H09)06月)-032page
(SRSV)によることが判明しています。
この食中毒の特徴は、一、二日で胃腸炎を発病し、下痢を引き起こします。風邪とまちがえられることがあります。また、通常の食中毒と異なり、一月から三月の冬季間に発生します。原因としては生もの(生カキ等)が考えられています。
もうひとつの特徴としては、SRSVは細菌のように食品の中で増えることはなく、生きた細胞の中でしか増殖できません。充分な加熱で防止できます。
しかし、ウィルスは培養できないため、感染経路や原因食品の特定が困難であることから、今後も増加することはまちがいありません。
※ 参考文献
本田武司著「食中毒学入門」日本食品衛生協会編「わかりやすい細菌性食中毒菌」
四 平成八年における県内の食中毒発生状況
平成八年に県内で発生した食中毒は二十三件(前年比十一件の増)、患者数は一、〇三六人(前年比八六一人の増)となっています。
原因別では、不明が十件と多く、サルモネラが六件、腸炎ビブリオが三件、黄色ブドウ球菌が二件となっています。学校給食での食中毒の発生はありませんでした。
前記の数字には腸管出血性大腸菌による食中毒は含まれていませんが、ちなみに県内では十四件十四人の患者がありました。
五 食中毒防止対策
文部省は、平成九年四月一日付けで「学校給食衛生管理の基準」を定めました。
これまでの学校給食における衛生管理の改善充実及び食中毒防止に関する多岐にわたる通知を見直し、留意事項を集約・整理したものです。
衛生管理の改善充実の観点から必要な事項を加え、学校給食の業務の流れに添って基準を明確に示しています。
今後はこれに基づき衛生管理の徹底が図られることになります。なお、この基準の、「施設・設備」に関する概要については次のとおりです。
1 学校給食調理場の衛生管理に関する指導体制
ア 都道府県教育委員会及び市町村教育委員会は、関係保健所の協力、助言、援助を受けつつ、随時管下の学校給食実施校等の施設・設備等の実態把握に務め、衛生管理上の問題点がある場合には、学校医、学校薬剤師の協力を得て、改善措置を講じるようにすること。
2 学校給食施設・設備
〈学校給食施設〉
「望ましい施設・設備の配置列」を参考に、設計段階において保健所又は学校薬剤師等の助言を受けること。
1) 早急に整備を図ることが必要な事項
ア 食品保管庫の調理室を経由しない配置と適切な温度・湿度管理
イ 調理室内の汚染・非汚染作業区域の明確化
ウ エアーカーテン等の設置
エ 給水蛇口の直接手指を触れない方式の採用
オ 学校給食従事者専用手洗い施設は、出入り口や便所、作業区分ごとに設置
2) 早急に計画を策定し改善を図ることが必要な事項
ア 施設の新築、改築、改修にあたってのドライシステムの導入
イ 施設の作業区分の明確化
研修、保管、下処理、調理、配膳洗浄
ウ 調理室内の温度及び湿度管理が行える空調等の設置 他
〈学校給食設備〉
ア 調理器具は、食肉類、魚介類、野菜類、果実類等の食材の種類ごとに整備
下処理用、加工調理、調理後食品等処理の過程ごとの区分が必要
設置や調理内容に応じて調理作業を合理化する調理用機器の設置
(焼き物機・揚げ物機・真空冷却機中心温度管理機能付調理機器等)
イ 流しは食品洗浄用と食器洗浄と区別
食品洗浄用は下処理用と調理用に区別し、食器具洗浄用流し及び野菜洗浄用の下流しは三槽式
ウ 調理後食品の保管のための保温食缶・保冷食缶の整備
エ 原材料保管のための冷蔵・冷凍設備の整備
オ 共同調理場で調理した食品の調理後二時間以内での給食 他
3 学校給食施設・設備の清潔、衛生
ア 調理場は十分な換気を行い、湿度は八十パーセント以下、温度は二十五度以下に保つことが望ましい。
イ 防鼠防虫の徹底と発生状況の一カ月に一回以上の巡回点検
駆除は半年に一回以上
ウ 食器具、容器、調理用器具
特に、まな板、しゃもじ、竹ざる等の木製器具及び包丁は、使用後に八十度、五分以上又はこれと同等の効果を有する方法により確実に消毒し、適切な保管が必要、洗浄水等が飛沫しないように行う。 他
おわりに
学校給食における食中毒の発生がO-157やサルモネラのように、極めて少数の菌で感染・発病する感染型に変遷してきたことを踏まえて、食中毒防止対策には大きな発想の転換が必要です
食中毒予防の三原則「菌を付けない」「菌を増やさない」「菌を殺す」の考え方に立ち、今後ともより安全でおいしい学校給食となるように努めてまいります。