教育福島0203号(1997年(H09)06月)-035page

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王子さまの人間追求

県教育センター次長

宮前貢

 

の虜になっていた。以来今日まで内藤濯さんの訳本(岩波書店)で楽しんでいる。

 

「星の王子さま」。初めての出会いは、大学三年。フランス語(中級)のテキストになり、辞書を頼りに悪戦苦闘しているうちに、話の楽しさの虜になっていた。以来今日まで内藤濯さんの訳本(岩波書店)で楽しんでいる。

「ぼく」と「王子さま」の対話は、かわいくて、美しい夢とロマンの世界に満ちている。

しかし、例えば、

「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ」 

「そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは目に見えないのさ」 

王子さまが眠りかけたので、ぼくは両腕でかかえて歩き出しました。まるでこわれやすい宝を、手に持っているようでした。地球の上に、これよりこわれやすいものはなにもないようにさえ感じられるのでした。 いま、こうして目の前に見ているのは、人間の外がわだけだ。一ばんたいせつなものは目に見えないのだ 

「目ではなにも見えないよ、心でさがさないとね」(一三〇〜一三七ページより抜粋、傍点宮前)

こんな一節では、「自分さがしの旅」をしているこわれやすい子供たちの宝さがしをする教師のあり方がやさしい言葉で厳しく問われ、ガーンと一発かまされる。

教師の道を選んで三十年。教師の心(マインド)にこだわり続ける原点は、恩師林竹二先生と「王子さま」の人間追求である。

一九九三年四月、世界児童文学集第一巻として、すてきな布張りの本に生まれ変わった。その秋、海外研修となった私は、この本五冊を携えてフランス・リヨン市を訪れ、教育委員会の方々に贈った。感性豊かなフランス人は、日本語で里帰りした「星の王子さま」を手にして涙を流して喜んだ。

「王子さま」は、思い出深いテキストとともに、長い間私の本棚の定まった所で小さく輝いている。

 

本の名称:星の王子さま

著者名:サン=テグジェペリ作

内藤濯訳

発行所:岩波書店

発行年:一九九三年

本コード:ISBN四-〇〇-一一五七〇一-二

 

「明日を拓く女性をめざして」

相馬市立磯部中学校教諭

幕内冨美子

 

よろしく「日本にもこんな素晴らしい女性の先駆者がいたのだよ」と叫びたい。

 

最近、女子中学生から「二十五歳で結婚し、素敵な主婦になろう!!」「公務員になって職場結婚するの!!」など実に現実的な意見を聞くことが多い。私はそのような生徒に接するたびに、民主主義を熱弁する板垣退助よろしく「日本にもこんな素晴らしい女性の先駆者がいたのだよ」と叫びたい。

この本は、過去百年間の女性九十五人の写真と、ひたすら自立を目指して自分の道を切り開いた真実の言葉が中心である。

男尊女卑、家族制度が横行していた当時の社会にあって、女性が自分の意志で自由に生きることに今ほど社会に自由に受け入れられなかったはずである。

しかし、医学、社会運動、科学、芸術、教育などあらゆる分野にわたって、生涯を努力と情熱で貫き通した女性たちがいたのである。

女医第一号の萩原吟子は「医は女子に適せり。むしろ女子特有の天職なり」と語る。写真の隣で、女子体育の創始者井口阿くりは、「日本の女だからと申して、させて見ないで出来ぬ、出来ぬというのはいけませぬ。物は試しですから何でもさせて見るのが宜しいのです」政治家の藤原美智子曰く、「どこの国の女性でも、不幸になってほしくない」と。

モノクロ写真の肖像は実に美しい。意志的な顔立ち、満ち足りた、または見果てぬ夢を追う眼差し。一筋の道を歩む孤独と隣り合わせの先駆者たちの姿である。

その写真と一人一人の奥深い言葉から「よし、明日もやるぞ!!」と自信と勇気が湧いてくる力強い本である。また、女性ならではの闘争心と活気が湧いてくる一冊である。

現実的で、平凡な幸せを夢見るだけの現代の女子中学生に、是非、この本を通して、意志のある生き方を考えさせ、「明日を拓くのは自分自身であること気づかせたい。

 

本の名称:先駆者たちの肖像

〜明日を拓いた女性たち〜

著者名:財団法人 東京女性財団編集

発行所:ドメス出版

発行年:一九九四年十二月

本コード:ISBN四-八一〇七-〇三八六X

 

 

 


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