教育福島0205号(1997年(H09)09月)-029page

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るばかりです。

昨年の十二月二十七日、各官庁の御用納めの日、「東都麻布之絵図」と現代の東京区分地図、カメラを持って、港区麻布地区を私流の江戸切絵図散歩をしてきました。

麻布は、東京の若者文化を発信する町として知られていますが、現在ではテレビ朝日、各国大使館などが立ち並び、当時の面影を残す景色は見当たりません。かつてここは渋谷川に沿って各藩の下屋敷が点在し、ちょっと足を延ばしたところにある原宿村は、水車小屋と数件の農家しかありませんでした。このように、現在の変わりようを比較する時がまた江戸切絵図散歩の面白さかもしれません。

この麻布地区の主な大名屋敷跡である毛利藩邸はテレビ朝日へ、宇和島藩(伊達家)邸は大韓民国大使館へ(ここは今も仙台坂として名前が残っています)、南部藩邸は有栖川宮記念公園へとそれぞれ二百数十年の年月が新しい麻布の顔を作っています。しかし、当時の顔を残すものがなくなったわけではありません。一つは数多くの神社仏閣です。当地には幕末に英国領事として活躍したタウンゼント・ハリスに縁のある善福寺があり記念碑も残され、今もたくさんの善男善女でにぎわっています。

そしてもう一つは道路です。意外にも現在使われている幹線道路は、ほとんど当時のままであるということです。特にこの麻布地区は、当時の面影を残しており、切絵図だけでも散歩ができ各大名屋敷だけでなく、名もない下級武士や町人たちの生活空間が感じられる面白さがあります。

このように切絵図を頼りに、タイムスリップする時間をこれからも楽しんでいきたいと思います。

(いわき市立白水小学校教諭)

 

環境教育の授業をして

大宮三枝

 

かもしれない」と考えて、算数で環境教育の授業を組み立ててみることにした。

 

学校で環境教育の指定を受けてわたしも研究授業をすることになった。教師になって二十年以上たつのに、授業はやはり難しい。環境教育と関連した授業とはどのようなものだろうかと悩む日が続いていたとき、ある本の線対称についての記述が目に止まった。その本では線対称を地球と関連付けて説明していたのだ。そこで、「対称という図形の問題を地球の自然と結び付けて考えれば環境教育になるかもしれない」と考えて、算数で環境教育の授業を組み立ててみることにした。

広く宇宙に目を向けると、星はみな球形ばかり(中にはしっぽを付けて走っているのもいるが)。図形の観点からみるととても単純な世界である。先日新聞に掲載されていた火星の映像を見ても、ただ岩がごろごろしているだけの殺風景な景色で、算数科で学習する図形に結びつくような形は見つからない。ところが、地球に目を向けるとどうだろう。じつにさまざまな形が見られる。人間が作った物はもちろん、自然の動植物の形の中にも、四角形や三角形や円、それらを組み合わせたいろいろな図形が隠れているのだ。

花の形、葉の形、虫の形、鳥や魚の形、顕微鏡でみた微生物の形まで、いろいろな生き物を思い浮かべてみると、線対称な形をしたものが次々に見つかってくる。中でも動物は正面からみるとほとんどが線対称になっている。人間はもちろん、きつねもたぬきも、象もネズミも、ライオンもうさぎも、前から見るとみんな線対称な形だ。

わたしは、地球の形を丸く描いて、その地球のまわりにいろいろな動物がこちらを向いて並んでいるイラストを思い浮かべてみた。線対称な動物がいっぱい地球を囲んで並んでいる絵は楽しい。算数だから対称の軸を点線でかいて、それを伸ばしてみよう。すると、いろいろな動物の対称の軸は地球の中心で一つに集まってくるではないか。

こんなイラストをイメージして、わたしは、「地球はたくさんの生き物がなかよくいっしょに生きているかけがえのない星なんだ」ということを強く感じた。そして、「環境教育として、このことを子供たちと考えてみたい」と、授業検証テーマを決めた。

さて、こうして実施した研究授業はどうだったか。やはり、いつものように反省点が山ほどある心残りなものに終わったのだ。ただ、算数の授業の中で子供たちと地球について考える機会が持てたことは一つの収穫だったと思っている。

(福島市立御山小学校教諭)

 

 

 


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