教育福島0205号(1997年(H09)09月)-033page

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平成九年度は昨年に準じた事業計画を立て、実際に事業を進めているが、これを機会に、一人でも多くの方々に理解を得ることができるように事業を進め、研究にあたりたいと考えている。

 

3 いわき養護学校の実践

 

「合同現場実習と事業主の学校訪問を通して」

 

本校では、研究主題を「一人一人の可能性を生かした進路実現の方策」と設定し、障害のある子供の社会参加・自立、生きがいのある生活を目指す進路指導の在り方について各事業を通して研究を進めている。

事業の目標としては、子供のもつ可能性を長期的に最大限育てていくために、小・中・高等部一貫した進路指導の下で、一人一人の発達の状態や特性、興味、関心及び家庭や地域の条件等に応じた進路指導の実現を図ること、協力校の中学校特殊学級や地域社会の様々な分野の方々のご理解とご協力を得ながら子供の地域に根ざした進路実現を考察することを掲げている。

今回、本校での取り組みの中で、「合同現場実習」と「事業主の学校訪問」について報告したい。

 

合同現場実習について

 

本校の後期現場実習期間中(九日間)に協力校の生徒とそれぞれ三日間実施した。主な目的は、中学校特殊学級では、現場実習を実施していないので、体験を通して進路について考えてもらうことと、本校の進路指導の在り方を協力校の先生方に理解してもらい、障害のある子供の進路指導をお互いに検討する機会として設定した。

校内現場実習の作業内容は、電機部品の組立(カーナビゲーションとワイパーの部品加工)と段ボール箱組立(納豆を入れる箱)を行い、二つの班に分かれて取り組んだ。

ここで、合同現場実習に参加した協力校生徒の感想文を紹介する。

「一日目、私は、すっごくきんちょうしていた。一日目の作業は、いろいろ説明を聞いてから、ラジオ体操をしてからはじめた。作業は、車の部品を作る作業だった。黒いチューブに白色のテープや黄色のテープをはったりみなおしたりした。けっこうまん中にはるのがむずかしかった。一日目は、だれの名前もおぼえなかった。養護学校には、タイムカードという物があった。二日目になるとタイムカードをやるのがたのしくなってきた。三日目は、いろいろな友達と先生の名前も覚えた。…中略三日目、かえるときすごく別れるのがつらかった。私にとっていろんなことで勉強になった。また、養護学校のみんなに会いにいきたいと思う。」

 

合同現場実習(ダンボール箱組立)

 

合同現場実習(ダンボール箱組立)

 

事業主の学校訪問について

 

合同現場実習期間中に実施した。主な目的としては、事業主の方々に障害のある子供の就労に対する取り組みを理解してもらい、履用促進を考えていただく機会とした。

前年度に発足し、ご協力いただいている「いわき市心身障害者職親会」の会員である企業だったが、会員の紹介で会員でない企業で参加したところが一社だけあった。これまでつながりのなかった企業の方に関心を持っていただけたことは、現場実習の範囲が広がるとともに、進路に関しても効果が期待できると思われる。

 

考察と今後の課題について

 

1)合同現場実習

 

○作業班の生徒の組み合わせについて。(交流を多くとれるように)

○実習期間の延長について。

○保護者の参観について。(協力校の保護者にも啓発を図る。)

 

2)事業主の学校訪問

 

当日、参加いただいた方々にアンケートをお願いして得られた感想の中からいくつかを紹介する。

「このような機会があり、良かった。」

「個人的に再度見学してみたい。」

「生徒が伸び伸びしていた。」

「社会に出てからの受け入れを私たちの方が考えなければと思う。」

など、今まで以上に養護学校や特殊学級の生徒に対する理解を深めていただく、良い機会となったようである。

 

平成九年度も、すでに協力校と事業所訪問、合同授業、小規模作業所の方々との進路指導懇談会を実施し、十月に作業学習作品展示会、十一月に合同現場実習と事業主の学校訪問を予定している。合同現場実習は四日間、また、事業主の学校訪問では、生徒の進路先として重要な役割を果たすと考えられる知的障害者の施設の方々の参加も依頼する予定である。

 

 

 


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