教育福島0205号(1997年(H09)09月)-035page

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器により異なっており、単に寿命の伸びだけではなく、社会環境の変化でも差が出てくることが分かっています。この差をもたらすものが、遺伝子に変異をもたらしたり、がんの成長を促進させることに関与する俗に発がん物質と呼ばれるものです。がんの予防は、この発がん物質をからだから遠ざける一次予防と検診で早期発見・治療を図る二次予防とがあります。

 

イ 食生活との関係

 

日本では、消化器がんが全体の六割を占めるほど多いので、まず、食事が問題になります。以前胃がんが多かったのは、食塩の過剰摂取や低栄養が関与しているといわれてきましたが、食生活の欧米化にともない、胃がんの増加は頭打ちになり、脂肪摂取量の増加とともに、最近は大腸がんや乳がんの増加が目立ってきています。しかし、食事の発がんに関係する作用は、きわめて緩やかであり、また、がんに関与しない食品だけを探すのは不可能に近いので、まず偏食を避け、バランスのよい栄養をとることを心がけるようにしましょう。

 

ウ たばことの関係

 

がん死亡の年次推移では、男性の肺がんと肝臓がんの上昇が目立っています。このうち肺がんに関しては、特に喫煙との関係が問題になります。イギリスでは、古くからたばこが普及しており、肺がんの増加に悩まされていました。たばこと肺がんの因果関係が報告されてから、国家的な禁煙政策がとられ、喫煙本数の少ない若い層から肺がん死亡が低下し始めました。アメリカでも強力な禁煙運動が始められ、最近男性の喫煙率が三〇%まで低下したところで、上昇の一途をたどっていた肺がん死亡がようやく頭打ちになってきたといわれています。このように、予防運動の効果が現れるには、十五〜二十年の歳月を要しますが、肺がんは、検診による早期発見、早期治療が困難な疾患であり、肺がん死亡の減少には、禁煙による予防がなによりも重要といわれています。

 

主な発がん物質

・たばこの煙

・殺虫剤

・太陽の紫外線

・自動車の排気、工場廃棄物などから出る炭化水素などの化学物質

・X線、ラジウムなどの放射性物質

・コールタール、石綿

・ベンジン など

 

エ 肝炎ウィルスとの関係

 

肝臓がんの大部分は、B型とC型の肝炎ウィルスが関与していることが分かってきました。主な肝炎ウィルスは、飲食物などから感染するA型、血液を介して感染するB型、C型があり、A型とB型は成人が感染すると、まず急性肝炎として発症しますが、A型は慢性化せずほとんどが治ります。B型も慢性肝炎に移行するものはごく一部だけです(B型の場合、出産時の母子感染では、たとえ発症しなくてもウィルスをもち続けるキャリアに移行するものもあります)。C型は感染してもあまり激しい症状は出ないものの、そのまま慢性化する率が非常に高くなっています。

肝臓がんは、このウィルスが原因の慢性肝炎、肝硬変という経過の中から発生してくることが分かってきており、その大部分は、B型、C型の肝炎ウィルスの感染が長期間続くうちに発生してくるものとされています。そのうち、肝臓がんの八割以上を占めるのがC型肝炎ウィルス関連のもので、その多くが、昭和二十五年から五十五年ころまでの間に輸血や針などによって感染した人たちです。感染後、慢性肝炎、肝硬変の時期を二十〜四十年くらい経過したあたりで、がんが発生し、現在そのピークにさしかかってきているため、肝臓がんが急増しているものと考えられています。

C型肝炎ウィルスは、感染力が弱く日常生活でうつることはありません。現在では、C型肝炎ウィルスが検出できるため、輸血用血液のチェックが可能になっており、また、医療に使う針は使い捨てのものを使用しているため、今後新たにC型肝炎に感染する確率は、非常に低くなっています。

 

2)がんの対策

 

ア セルフチェックが可能ながん

 

一般的に早期がんの発見には、自覚症状は当てにはなりませんが、以下のからだの表面近くにできるがんはセルフチェックが可能です。

 

 

 


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