教育福島0206号(1997年(H09)10月)-041page

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事業を計画しています。これは、地域の保育所や幼稚園及び小・中学校に在籍している障害児の早期教育や養育・教育的なかかわり、親の会への支援等を積極的に行うというものです。この事業をとおして、さらに地域から信頼される学校を目指したいと思っています。

 

全校一斉の朝の十分間読書について

県立石川高等学校

 

一、「十分間読書」とは

今年の四月十四日より、「全校一斉の朝の十分間読書」が始まりました。「十分間読書」とは、教師と生徒が、毎朝始業前の十分間、好きな本(ただし、マンガと雑誌を除く)を一緒に読む教育活動のことで、人間性豊かな心とたくましく生きる力の育成を目指しています。

八時四十分になると、十五人の担任が本を抱えて、クラスに向かいます。間もなく、それまでの喧噪が嘘のように、学校全体が静寂に包まれます。その間、生徒指導部の教師を中心に、生徒昇降口に立ち、遅刻してくる生徒の指導にあたります。遅刻者は十名前後。このように、全職員が一丸となり、生徒の自主性を尊重しながら、PTA、同窓会の支援のもと、評論家江藤淳氏が絶賛する「十分間読書」は、本校の新しい伝統として次第に定着しつつあります。

二、「十分間読書」のきっかけ

昨年の九月に開催された県南高校図書館研究会総会に出席した図書部長が、一枚の新聞記事(一九九六年七月三日付の「東京新聞」)を持ち帰り、全職員に配布しました。

そこには、千葉県の船橋市立船橋中学校の「朝の読書」の取り組みと成果が紹介されていました。

このことがきっかけとなり、九月末の運営委員会で、「十分間読書」のことが話題になり、先進校の視察と学年で話し合うことが決まりました。こうして、半年間にわたる「十分間読書」の検討が始まったのです。

会議では「漢字もろくに読めない生徒が、静かに本を読むだろうか」、「担任の負担が増えるのでは」など率直な意見が交わされました。

しかし、後述する生徒の自主性の芽生え、本校活性化の動きのなかで、教師全員の共通理解のもとに、「全校一斉の読書」の実施に踏み切りました。

 

三、学校に変化が

 

三、学校に変化が

特色ある学校づくりを模索するなかで、本校生に変化がみられるようになりました。

その先鞭をきったのが、昨年の五月、三年生の有志による十年ぶりの応援委員会の復活でした。この話題は、地域でも評判になり、本校の活性化のきっかけとなりました。これに刺激され、野球部が三十九年ぶりに夏の大会で三回戦まで勝ち進み、学校が大いに盛り上がりました。また、朝河貫一賞優秀賞受賞、演劇部の四年連続東北大会出場および優秀賞獲得など、生徒が変わる、教師が変わる、学校が変わる、それを予感させるような出来事が相次ぎました。

そんな中、十一月から一部のクラスで「十分間読書」の試行が始まりました。実施クラスの一五三名の生徒たちの感想文は実に感動的な言葉で綴られていました。これが、「全校一斉の十分間読書」実施に向けての大きな後押しとなりました。

四、「十分間読書」の成果と課題

「十分間読書」を始めて、生徒の大多数が、読書を楽しいと感じ、休み時間はもちろん、家でも本を読むようになり、生徒の三割が本屋に足を運び本を購入するようになりました。

また、「漢字を覚え、本をスラスラ読めるようになった」「集中力がついた」「人の気持ちが分かるようになった」など、生徒の反応は予想以上に素晴らしいもので、読書活動が、生徒の心を豊かに育てるうえでも役立つことを教えてくれました。

生徒に本を継続的に読む機会を与えることにより、読書の習慣を養うことができ、SHRも静かに始められるようになったなどの成果がみられるようになっています。

今後の課題は、本を読まない一部の生徒をどうするか、生徒に読ませたい本をどのように見つけ、どのように紹介していくか、遅刻を繰り返す生徒をどのように指導していくかなどです。今後、改善を積み重ねて、本校独自の「十分間読書」をつくりあげていこうとしているところです。

 

 

 


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