教育福島0207号(1997年(H09)11月)-011page

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関係教職員による「個別考察会」を実施し、各生活場面における情報を交換して、児童生徒一人一人の変容の確認や今後の課題について共通理解を図るようにしています。

 

移動能力測定月間(年2回実施6月、11月)

 

移動能力測定月間(年2回実施6月、11月)

小1男児の「寝返り」による移動距離測定の様子

 

また、保護者に対しては、特に次の二点の取り組みをしています。

1) 養護・訓練の授業参観及び家庭における養護・訓練の実技指導等を行って、保護者の養護・訓練に対する理解を深める。

2) 養護・訓練連絡票によって、保護者に対し訓練のねらいと長期休業中における家庭での取り組み内容を伝えるとともに、定期的に「ようくんだより」を発行し、児童生徒の日常の取り組みや学校の考え等が伝わるように工夫して、保護者の意欲の高揚に努める。

 

廊下に表示されている白線(100m)に沿って「四つばい」での移動距離の測定

 

廊下に表示されている白線(100m)に沿って「四つばい」での移動距離の測定

A君は、時間内(2分30秒)に90m進むことができた

 

【病弱】−県立須賀川養護学校−

病弱養護学校では、児童生徒の病弱・身体虚弱の状態等に応じて、学習の空白や学習の遅れに配慮した指導や、経験の不足あるいは偏りを補うための工夫など、適切な指導援助が行われています。

本校は、国立療養所福島病院と隣接して設置されています。本校の他に医大分校・郡山分校・会津養護学校竹田分校があり、病院との連携を緊密に図りながら指導に当たっています。

 

高等部〜特別養護老人ホームとの交流活動〜

生徒は、約八十%が心身症で(他は、心臓病等の慢性疾患)、過去において不登校や集団への不適応などを経験しています。そのため生徒たちは、「学校へ行けなかったことへの罪悪感」、「学習の遅れからくる劣等感」、「自信のなさ」、「物事に対する過度の心配や不安」があり、自分に対して否定的なイメージを持ちがちです。

このような生徒の課題を改善するためには、自己理解を深め、欠点だけでなく、自分の良さを認識させることが大切になります。

数年前から、養護・訓練の一環として、特別養護老人ホーム「シオンの園(須賀川市)」にボランティアに出かけ、自分なりに考えた活動を通して交流を行っています。九十歳のおじいちゃんに将棋で負かされ「さすがキャリアが違う。修業して出直します」と話す生徒や、車いすのおばあちゃんを散歩に誘い、語り合う生徒もいます。また、折り紙やあやとり、絵を書く生徒等、とても和やかな雰囲気で活動が行われています。

お年寄たちの笑顔や「ありがとう、また来てね」という励ましが、生徒たちを元気づけ、彼らの本来の良さを引き出しています。

「自分にも何かできる」「人を喜ばせ、役立つことができる」という自己の存在価値が確認できる経験の場として、老人ホームでのボランティアは、生徒たちにとって欠かすことのできない有意義な活動になっています。

 

老人との将棋を差している光景

 

老人との将棋を差している光景

 

四 おわりに

以上、報告してきた内容は、各学校の実践のごく一部にすぎません。

各学校とも、障害種別に応じた実践的内容であり、それぞれに特色ある教育活動と言えます。共通していることは、それぞれの活動が、子供一人一人の「生きる力」の育成につながるものであり、子供たちの豊かな人間形成や社会性の育成を図る上で大きな教育効果が期待されるとともに、障害のある子供たちへの正しい理解にもつながる教育活動であると言えます。

 

 

 


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