教育福島0207号(1997年(H09)11月)-026page
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次の日から、
「できるよ。やってごらん」
と、送り出すようにした。ある日、一人の男の子が、
「先生、ぼくはいつも整列とか移動の時おしゃべりしちゃうけど、今日は、できる、できるって思ったら、おしゃべりしないでできたよ。『できる』っておまじないみたいだね」
と、うれしそうに話してくれた。子供たちのために子供たちのことを信じることの大切さが、ほんの少しなのかもしれないが分かった気がした。
教員生活がスタートして約八カ月、その中で多くの問題に直面してきた。その度に、たくさんの先生方に温かいアドバイスをいただき、保護者の方に励ましの言葉をいただいてきた。自分の生活が、多くの方々に支えられていることを強く感じている。
「先生さようなら。また明日ね」
元気よく私と握手して帰っていく三十三人の子供たちのために、少しでも何か役立てるよう、努力を惜しまず共に生活していきたいと思う。
(石川町立石川小学校教諭)
ある朝のこと
箭内清和
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わが家に一匹の犬がいる。アラスカン・マラミュートという種類の大型犬である。以前いた柴犬が死んで、しばらく悲しみに暮れていたが、ふとしたきっかけで知り合いからもらえることになり、思い切って飼うことにした。子供たち、特に小学校六年の娘が飼うことを強く望んだ。飼うにあたっての約束は、朝晩の散歩を含め子供三人でよく面倒をみることであった。
二人の息子と娘で曜日ごとに当番を決めて、朝晩の食事や散歩の世話をする毎日である。
三月にかわいい子犬だった『パック』もいまでは成長し、世話も容易でないほどの大きさになってきた。特に、眠い目をこすりながらの朝の散歩はつらいらしい。
ある朝、娘が「お父さん、パックの散歩手伝って」と言う。休日ならともかく平日のつらい朝である。何とか逃れたい気持ちである。よく聞くと、パックの小屋を掃除したいので、その間散歩してほしいという。「掃除なんて、今度の休みにすれば」に対し、「うんちがいっぱいあって、パックがかわいそうなの」と語調が強くなる。ここまで言われればしょうがない。朝の忙しい時間に追われながら付き合うことにした。
散歩をしてもどってくると、娘はまだ犬小屋を掃除していた。時間がない。限界である。これ以上付き合っていると、食事もしないで出勤するはめになる。どうしたものかと迷っていると、「パックをその辺につないで行っていいよ。遅れちゃうから」と言う。「じゃ、先に行くね」と後を頼んだ。
短時間の朝食をとりながら、暖かい気持ちになった。
「優しさは、自然に備わるものでなく、具体的に教えるものだ」と言った人がいた。「毎日の生活の中で、周りの大人が子供たちに身をもって優しさを示してやることが大切である。優しくされたことのない子は、人に優しくなれない」と。
二十一世紀を『心豊かで、たくましく生きぬく』子供たちを育てるために、"心の教育"が叫ばれている昨今、必要なのは我々大人の頑張りではないかと思う。
物質的な豊かさと引き換えに多忙な生活を強いられている中においても、おろそかにしてはいけないもの、忘れてはならないものは何かをしっかりとらえ、それを子供たちに伝えていく努力を、まず子供の周りにいる我々親が、大人がしていく必要があるのではないかと思うのである。
(棚倉町立棚倉中学校教頭)
絆
山口祥枝
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「うしろからくらすけろ」
クラスケロ?
数学の授業中、すぐ前の席の男子が騒いでいて注意されたあと、先生が私に叫んでいる。「はい」とりあえず立ち上がる。
「うわっ、立ち上がった」というささやき声。クラス中が笑いをこらえ期待に満ちている。
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