教育福島0207号(1997年(H09)11月)-039page
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スメントに必要な検査を選択することと、結果を詳しく分析して個人内の特性に関する資料を得ることが大切です。例えば、代表的な知能検査のWISC-Rは、IQのみでなく、知能を構成するいくつかの要因についての特性を分析できるようになりました。さらに三年ほど前には、従来の知能検査では測定できなかった認知の力を測定し、かつ子供の強い力、弱い力を特定できるK-ABCが発表され、子供の強い力(自助資源)を活用した指導計画を立てられる点で注目されています。当センターでは、子供をどう養育したらよいか、どう指導したらよいか相談したいというケースには、子供の学習の不得意な点や行動上の特徴を説明したり、養育や指導をする上で活用できそうな強い力を特定し、それを生かしたかかわり方や子供のやりやすい方法を説明する際に心理・教育アセスメントを行い、相談に役立てています。
次に、具体的な教育相談の事例を通して、子供の良さ(強い力)を生かす指導について説明したいと思います。
家庭と保育園での姿に違いのある幼児
☆ 教育相談の始まり
小児科医師の紹介(ゆくゆくは学習障害児の状態を呈する心配を抱かせる発達を示しているとの判断)で、五歳女児と両親が教育相談に訪れました。父親は、家庭における子供の様子には問題を感じないので、なぜ教育相談をすすめられたのか疑問を感じている様子でした。母親は、保育園での様子から、注意が移りやすいこと、他児の中に入っていけないことなどを気にしていました。
☆ 心理・教育アセスメントから
両親との面接から、左右弁別や前後の判断ができないなど空間認知の問題、集団参加に困難があるなどの社会性の未熟さなどが明らかになったので、K-ABCを中心としたアセスメントを試みました。小児科において実施した発達検査、田中ビネー知能検査の結果や一緒に遊びながらの行動観察の結果などを組み合わせて、総合的に判断しました。
☆ 認知の偏りからおきる困難さ
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1) 空間認知、視覚的な刺激の認知が弱いので、前後、量の関係、回転したものの認知ができない(例えば、おもちゃがひっくり返っていると分からない、トランプをひっくり返せない)。
2) 時刻は分かるが、時間の量的関係が分からない。
3) 場の状況の全体的な判断や場の雰囲気、相手の気持ちや感情を認知するのが不得意なため、集団にうまくなじめず、対人関係がうまくとれない。
4) 不得意な認知の力を必要とする、算数の図形・量と測定、社会の地図などは、学習する上での困難が予想される。
☆子供の強い力(良さ)を使った方法
順を追って段階的に認知する力、読みの力、聴覚の記憶、数的能力が強いので、これらの力でできないことをカバーし、できることを増やすことで、少しずつ自信がもてるようにすることを基本にして考えていきます。
1) トランプをひっくり返すときに「いち、にのさん」と言うなどタイミングを声(音)で聞かせる。回転した物としていない物が同じだということを、具体物を徐々に動かしながら理解させる。
2) 時間の経過を伴うことがらは、時刻で確認させたり、乗ったリフトの長短の判断を支柱の数や番号で行わせたりする。
3) 得意なことやうまくできることを媒介として他の子供と遊べるような雰囲気を作ることから始める。うまくできないことは、「こうするといいよ」「こうするとよく分かるよ」のように具体的な行動目標やモデルを示すようにする。
4) 文字や数字を書き加えて説明をすること、グラフのように全体を見て判断しなければならないものは、数直線に置き換えて目盛りを下から順に読んでいくなど、段階的に情報を提示したり、言語的な手がかりを重視したりする。
☆ 両親の工夫
できないことや困っていることを敏感に受け止めて、できる方法を工夫してかかわり、理解状況を確かめて改善を加えています。
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