教育福島0208号(1998年(H10)01月)-016page
た。作品としての出来栄えや結果のみにとらわれることなく、よさについて温かく共感したり、よさを発揮できるように表現方法や参考資料等を紹介するなどの支援をしたりして、指導と評価の一体化を図った。
また、表現活動の製作過程や成果を把握するために、四つの観点から評価規準を設定し、これらの観点に留意しながら個人カルテをつくり、共感したり支援したりした。評価の方法としては、規準をもとに、授業中の子供の活動の様子や子供同士のかかわり合いの様子を観察する、教師と子供の話し合いや子供のつぶやきも重視する、製作中の作品や学習カードの自己評価から把握するなどがある。また、鑑賞カードで、自己評価や相互評価をしたことにより、子供一人一人が、自分の表現を温めたり、満足感を得たりすることができ、とても効果的であった。
資料4
◎ 個の表現に応じる教師の関わり方
T男 自分の思いを伸び伸びと表現できると思うので、自信を持って取り組めるよう共感していきたい。
M子 自分の思いを素直に表現できると思うので、称賛したり励ましたりしていきたい。
K男 自分の思いを表現できるように参考作品を提示して学習意欲を喚起させるなどの支援をしていきたい。
Y男 表現方法で迷っている場合は、材料コーナーや絵の具コ一ナーに目を向けさせていきたい。
N子 人のまねをしてしまうことが多いので、まねをしていない部分を称賛し、自分の表現に自信を持たせていきたい。
M男 表現が大まかすぎるが、その児童の表現を認めながらもその他の表現方法があることについても提案したい。
A子 迷っている場合は、表現が膨らむような材料をそっと手渡したり、置いたりしていきたい。
◎個に応じた称賛、励まし方
〈称賛〉
「どんどんつながっていくね。」
「すてきな花だね。」
・ 新たな発想を取り入れている児童を温かく見守り称賛する。
〈励まし〉
「参考作品を見てごらんきっと思いつくよ。」
「この方法ならうまく行くかもしれないね。」
・ 自分らしさを大事にするように励まし、一人一人の子供達の表現の思いに寄り添いながら、共感的に見守っていくようにする。
〈提案〉
「材料コーナーの中で使えるものはないかな。」
「こんな物を使ってみたらどうかな。」
・ 個に応じて具体的に提案していく。
(3) 日常の造形活動の実践
1) ピカソタイムでの技法紹介
授業の中では、いろいろな技法を体験することができないため、創意の時間を使い、ブラッシング、ぼかし、ステンシルなどの技法を紹介し、楽しく取り組ませた。ピカソタイムで体験した技法、ブラッシングやタンポでのぼかし、マーブリングなどを使って思いを表現する子が増えてきた。また、共同製作でもいろいろな描材や材料、技法で作品を仕上げることができた。
2) 人物タイム
毎週水曜日、朝の時間に友達を描いた。子供たちが描いた作品を見ると、絵の中に自分や友達の姿がいろいろな動作で楽しそうに描かれている。自分が描けないといって、クレパスをもったまま泣いていたK君も今では生き生きと自分を表現するようになった。(資料5・6)
K君の変容
資料5 自分の思いが表現できずにいたころの絵
資料6 自分の思いを生き生きと表現できるようになったときの絵
3) 感性や表現意欲を育てる環境の充実
階段の踊り場や廊下などを利用し、子供たちの作品をなるべく多く展示した。また、名画作品の掲示や、季節感を漂わせる装飾をしたりして、豊かな感性を育ててきた。
(4) 諸検査の結果と考察
1) 子供たちの意識調査
図画工作が「好き」「大好き」と答える児童が多くなった。絵を描いてうれしい時は、「ほめられた時」や「思い通りにできた時」というものが多く、「いやな時」は、二年次では、全児童が「ない」と答えた。
(考察)
共感的な態度で支援したことが、自分の作品に自信を持つようになったのではないかと考える。
自分が考え、自分の思い通りに表現でき、作品に教師も友達も共感し、応援していけば、今後も意欲的に取り組んでいくであろうと考える。
2) 図画工作科の学習に対する作文