教育福島0208号(1998年(H10)01月)-017page
○いろいろな材料や用具を使って描くことができて楽しいと感じている児童の作文(資料7)
資料7
(考察)
子供の思いは、表現していくうちにどんどん膨らんでいく。「自分はこう描きたい。こんな材料や用具を使いたい」と思っても、豊富な材料や描画材がなければ、思い通りに描くことができない。そこで、学級に、各種コーナーを設け、自己選択・自己決定できるようにしてきた。このことが、表現することの楽しさを味わわせることができたと考えられる。また、新しい技法に触れさせると、子供の意欲は高まり、ピカソタイムなどで経験した表現技法を図画工作科の時間にも活用するようになってきた。つまり、それが、教師や友達にも認められ、自信となり喜びとなってきた。そして、次の表現への意欲にもつながってきたといえる。
五 成果と今後の課題
(1) 成果
1) 発想に広がりが期待できる題材名の工夫や子供たちの興味を引き出し、思いが膨らむように、題材との出会わせ方を工夫したことにより、子供たちの発想が広がり、自分の思いを伸び伸びと表現できるようになった。
2) 主体的に表現できるように、自己選択・自己決定ができる場の設定をしてきたことにより、発想がなかなか思い浮かばずに悩んでいた子も、自分なりに表現の仕方を試行錯誤しながら、自ら進んで材料や用具を選び、主体的に表現する力が育ってきた。
3) 子供たち一人一人の表現に応じて適切なものを紹介したり、その子の思いを大切にしながらそっと聞いてみたりそれぞれの表現が膨らむような材料を手渡したり、教師も一緒になって活動し、さり気なく支援することを心がけてきたため、教師の称賛、励ましが大きな自信となり、絵を描くことが楽しいという子が多くなってきた。
4) 学級の中がなごやかで、子供たちが自由に語ったり、考えを話し合える雰囲気、それを認め励まし合える学級づくりに努めてきたことにより、子供たちの発想にも広がりが見られるようになってきた。また、よさカードを活用したことにより、友達の取り組みのよさに気付いたり、共感したりする子供が増え、子供たちも教師も、よさを見つけ高まり合おうとする意識が高まってきた。
5) コンクールで入賞することがねらいではない。しかし、検証授業した(実践2)の中から、福島県小学校児童画展において、特賞を受賞したことは、題材名の工夫、題材との出合わせ方、個に応じた支援の仕方、場の設定、さらには、ピカソタイムなどの研究の成果の表れの一つと考えられる。(資料8)
資料8 児童作品「グアナコ・アノアといっしょにうちゅうりょこうへ」
(2) 今後の課題
1) 子供の思いは、目に見えるものではない。学習カードや話を聞いたり、観察したりしながら把握してきたが、一人一人の思いを確実に把握することは容易ではない。固定観念を持たずに、子供の思いをより深くとらえ、よさをのばしていくために、今後も個に応じた支援の仕方を研究していきたい。
2) 子供たちの豊かな感性を育てるために、いろいろな作品を鑑賞させる幅広い鑑賞教育に取り組んでいきたい。