教育福島0208号(1998年(H10)01月)-021page
3) 子供の活動の姿に、連続して追究する姿や学習した成果を次に生かす姿が認められた。仮説に示した生きてはたらく力のうち「解決や実現の方法などを考え、工夫しながら実行していく力」や「得た知識や技能を活用する力」が育っている。これは学習活動の結果である絵画や作文、発表内容などが一つ一つを別に扱った場合に比べ、豊かで充実している点から明らかである。
道徳の時間の児童の反応やノートの記述、関連する各教科や特別活動に取り組む児童の姿などから、豊かな心の成長が認められた。
(2) 総合的単元構成の仕方について
1) 実践1での反省をもとに、実践2や3では、各学習内容を集中的にまとめずに計画し実行することで、各領域のねらいと総合的単元としてのねらいを達成することができた。
2) 年間をとおして一つのテーマを追うことのすばらしさを子供とともに体験できた。学級における道徳指導計画には総合的単元を組織できる芽は複数あったが、子供の意識やゆとりある学習活動を考慮すると、年間一〜二テーマに絞って実践することが適当だと思われる。
3) 学習指導案の表現形式等(略)
(3) 補充、深化、統合という道徳の時間のはたらきが総合的単元を構成することでより明確になった。実践1、2では諸活動のまとめとして、また、実践3では一連の学習の契機として大切な役割を果たした。
4 学習活動の支援について
(1) 適時オリエンテーションを行ったり学習資料などを掲示したりしたことは、子供の選択や自己決定を助けるのに適切であった。
(2) 活動が複線化した際や専門的になった時に必要に応じてT・Tを組み、子供の活動に応じた支援をすることができた。また、英語指導助手を招いたり地域の方のアイデアを学習活動に反映したりして地域の教育力を生かすことができた。
(3) 視聴覚機器を積極的に活用することができ、活発な取材や表現活動に結びついた。
(4) 学習の進度に合わせた資料コーナーの設置や学習の成果を累積した掲示は、学習意欲の向上や年間を通す単元の意識を大切にするためや成就感の醸成などに役立った。
(5) 発表会を開いたり年度末に学習内容を文集や作品集としてまとめたりしたことが、子供の成就感や保護者の理解につながった。
5 道徳の時間の指導改善について前研究の成果を合わせて考察すると、道徳教育に豊かな体験活動を生かすことのよさを再確認できた。各学年の学習内容、地域や学校などの環境や素材、子供の実態などに合わせて、指導する内容項目と体験活動の関わりを次のような視点から見直し、道徳の時間を工夫ある多様な学習に改善していくことが大切である。
○学期や年間をとおして総合単元的な道徳学習として重点的に取り組ませたい内容項目
○短期間内での体験活動と関連した学習が適している内容項目
○道徳の時間の中で動作化や役割演技などの活動による学習が適している内容項目
○体験活動が難しい内容項目
八 成果と課題
1 成果
(1) 生活科のよさを総合単元的な道徳学習の単元構成に取り入れたことで、子供が自分の思いや願いを大切にして学習に取り組むようになった。
各領域の学習が有効に関わり合い、豊かな心を育む中で生きてはたらく力を高めることができた。
(2) 総合単元的な道徳学習を基盤とした道徳教育の実現のための計画や支援を、学校や学級としてどのように進めていけば良いかが明らかになり、教育計画の改善に役立った。
地域素材や表現の素材などを有効に活用し、柔軟な学習活動を組織することで、地域に根ざしたゆとりある教育を展開できた。
完成した「三春歴史カルタ」(実践2)
2 課題
(1) 地域素材の収集と道徳教育の面からの吟味を継続して総合単元的な道徳学習をより充実させ、学校の実態に応じた特色ある教育を創造していきたい。特に、本研究で実践した内容の充実を図るともに、他の内容項目にも対象を広げて積極的に実践していきたい。
(2) ディベートやパネルディスカッションなどの多様な表現活動を道徳教育に取り入れて、より豊かな学習指導に改善していきたい。
(3) 長期にわたる総合単元的な学習で、児童の変容をより適切に把握していく方法を確立していきたい。