教育福島0208号(1998年(H10)01月)-034page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

研究実践

 

子供一人一人を大切にした指導

個別の指導計画の作成や研修をとおして

 

県立聾学校会津分校

 

一 はじめに

 

本校は小学部五名、幼稚部二名の小規模校で、県立会津養護学校に併設されている。在籍数は少ないが、聴覚活用がまだ不十分であったり、他の障害を併せもっていたりするなど、子供一人一人の実態は様々である。

そこで、本校では、研修をとおして、子供一人一人に配慮した指導のあり方と方向付けを明確にし、職員全体で指導に当たっている。

 

二 校内研修での位置づけ

 

(一) 個別の指導計画の作成

子供一人一人の発達を促す計画を作成するに当たっては、まず、個々の学習・言語習得状況を把握し、段階・方法・見とおしをもつことが重要である。その上で、全教科、養護・訓練等において、一人一人の実態に応じた「個別の指導計画」を作成した。

(二) 指導を深めるために

全職員が、子供一人一人の実態に応じた指導内容の精選や指導方法・教材の工夫などについて話し合い、研究の内容を実践に生かせるようにしている。また、実践の内容や方法の見直しを随時行い、より効果的な指導ができるように柔軟に進めている。

 

三 研修の概要

 

幼児児童の指導に十分生かせるように次のような研修を設定している。

1) 個別指導にかかわる研究

2) 幼児児童考察会

3) 文献研究「輪読会」

4) 校内講習会(外部講師の招聘)

5) 個別研修(教師各自の研修)

本稿では、1)と2)について述べる。

 

四 実践例

 

個別指導にかかわる研究

 

事例1 「A児(小学部四年)への算数指導」

1) 協議事項及び指導方針

A児への算数指導の進め方について左記のような内容で話し合い、指導方針を立てた。

ア 抽象的思考が特に苦手な児童であるため、具体的な操作や遊びを多く取り入れ、数の概念とたし算、ひき算を結びつけていく。

イ 図形に限らず、身近にあるいろいろなものの仲間わけをしたり、大きな数を数えるような生活題材をていねいに取り上げる。

2) 協議後の指導

ア 数の概念を形成するために、おはじきやカードを使ったゲームを繰り返し行った。また、その中で、二つずつ数えていく方法や、「多い、少ない」の比較についても取りあげた。

イ たし算、ひき算の文章題を読み、その文章題に使われている言葉一つ一つが、A児に確かな概念として入っているかを確認しながら、動作化したり、絵に表したりして、問題の意のイメージをつかませるようにした。

3) A児の様子と変化

ア ゲームに意欲的に取り組み、楽しく操作する中で、数の分解・合成について、無理なく理解できるようになった。

イ いろいろな場面で「多い、少ない」の比較をしたので、「〜は、〜より多い(少ない)」を言葉で表すことができるようになった。

ウ 「物をあげる(もらう)」などの具体的な操作をとおして、その状況をたし算、ひき算のどちらで表すのかを考えるようになった。

エ 教師とのやりとりの中で、文章題をイメージ化し、たし算かひき算かを考えながら、正しい立式ができるようになった。

オ 計算が速くなり、たし算については、指を使わずに答が出せる回数が増えた。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。