教育福島0208号(1998年(H10)01月)-035page
カ 位取りに気を付けながら、繰り上りのあるたし算ができるようになった。
4) 考察
A児の数の概念形成に当たって、具体的な操作を多く取り入れ、興味関心を持続させながら繰り返し行うことは、計算力を高める上で有効である。
また、物の数え方だけでなく、あやふやだった物の名称などについても、教師が意図的に取り上げ反復して働きかけると、生活の場面で応用して使うようになる。
幼児児童考察会
事例2 「B児(幼稚部四歳)言葉の指導」
1) 協議事項及び指導方針
聾学校で学ぶ子供たちは、聴覚障害があるため、耳から自然に入ってくる情報が少ない。したがって、意識的に相手の話を聴こうとする態度(傾聴態度)がないと、言葉の獲得や他者とのコミュニケーション関係に大きな支障をきたすようになる。
そこで、B児の傾聴態度の育成と引率者である母親への依存的態度を改善するためのかかわり方はどうあればよいか話し合い、次のような指導方針を立てた。
ア 傾聴態度の育成
話し手に注目させるために、意図的に、「話を聞かずに行動し失敗する場面」と「よく聞いて行動し、うまくできてほめられる場面」を設定する。
イ 母親の判断ではなく、自分で判断して行動できるようにするために、次のことを行う。
・絵カード提示による指示
・本児と母親や教師との位置関係の工夫
※ 母親とのかかわりを工夫する。
ウ 家庭におけるかかわり方について
・学校での活動の様子を撮ったビデオ、絵カードを持ち帰らせ、B児から、保護者に話しかけるきっかけにする。
2) 協議後の指導
前述の指導方針に基づいて、保護者の協力のもとに、かかわりを深めていった。
3) B児の様子と変化
ア 母親に頼らず、自分から友達にかかわりを持ち、主体的に遊ぶ様子が見られるようになった。
イ これまで、声を出しても話し手を注視することが不得手であったが、次第に、話し手を見て声を出し、生活場面で使える言葉が多くなってきた。
ウ 意にそぐわないことがあっても、長引かずに気持ちの切替ができるようになった。
※ 母親自身も必要に応じ、子供から、意図的に離れられる場面が多くなってきた。
また、意図的にB児に「失敗すること、成功すること」を経験させるなど、余裕をもってB児に接することができるようになってきた。
4) 考察
保護者(母親)と教師が、養育方針について共通理解を持ち、意図的な場面を多く設定して子供にかかわれば、子供は自信をもって他人に頼らずに行動しようとする気持ちが芽生える。
五 おわりに
個別の指導計画は、試行錯誤を繰り返しながらの作成だったが、指導経過の中で次の活動への見とおしがもて、全職員の共通理解を図る意味でも大きな目安と励みになった。今後とも、小規模校の特色を生かしながら「何がどこまでできたか」「何をどうするのか」を明確にした指導を継続していきたい。