教育福島0208号(1998年(H10)01月)-042page

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心に残る一冊の本

 

自己を変える勇気を

福島市教育実践センター所長

佐藤晃暢

 

を増しており、早急な対応を怠れば、日本の将来は危機的状況に追いこまれる。

 

二十一世紀が真近に迫ってきたいま、世界で最も老いの進んだ国となる日本が抱える課題は実に多い。国内はもとより、地球規模で生ずる問題も深刻さを増しており、早急な対応を怠れば、日本の将来は危機的状況に追いこまれる。

行政をはじめ、教育を含めた多くの分野で改革を進めているのもそのためである。しかし、問題は国民に危機感が稀薄なことである。

最近、日本の将来に関する書物を読むことが多くなったが、本書もその中の一つである。副題は、一部が「日本が消える」二部は「怠慢な日本人」とあり、二〇二〇年の日本と世界の姿を想定し、、そこから今解決すべき課題は何か、何故日本が消えるのか等々、様々な資料やデータを基に、分析・検討を加えてまとめた警告書である。

二部一章「教育が見えない」では、今後の日本の担い手となる若者たちに、社会を背負ってたつはずの「人が見えない」とこれまでの教育に厳しく転換を求めている。

職を退き、改めて思うことは、教育に携わる者は、もっと視野を広げ、社会を構成する多くの分野で行われている改革の流れに目を向け、本質を読み取りその中に教育改革を位置づけ、教育が果たすべき役割を真剣に考え取り組まねばならないということである。そうでなければ、教育における「不易と流行」を口にしながら、そのいずれをも徹底してこなかったことによるツケを清算し、新たな転換を図ることはできないと思う。

本書、まえがきの文中に、

「学校教育は、個を確立できない日本人の再生産を続けている。現役世代が自己を変えるのは、成功体験を捨てるのと同義だから確かに難しい。しかし、二〇二〇年の日本を背負う次の世代まで同じ色で染めてしまったら、二十一世紀の日本は夢を失ってしまう」とある。

教育者一人一人が、自己を変える心と勇気を持ちたいものである。

 

本の名称:2020年からの警告1) 2)

著者名:日本経済新聞社(編集)

発行所:日本経済新聞社

発行年:一部 一九九七年六月二十三日

二部 一九九七年九月二十五日

本コード:一部 ISBN 四-五三二-一四五九一-〇

二部 ISBN 四-五三二-一四六一六-X

 

愛は裁かず

福島県立須賀川養護学校教諭

江尻修

 

フかな?」と考えながら、テーブルや椅子を心を込めてきれいに雑巾掛けをする。

 

朝、「今日は、どんな教育相談があるのかな?」と考えながら、テーブルや椅子を心を込めてきれいに雑巾掛けをする。

この数年、授業の合間を見計らいながら多くの教育相談に携わっている。その相談の内容は不登校に関することがほとんどであり、相談者は保護者や生徒、時には担任がかかわることもある。

保護者や生徒は、今日までの苦しみの日々を切々と訴える。学校でのいじめや体罰のこと、登校できなくなってからの生活の様子等その内容は多岐にわたっている。

教育相談に当たっては、常に受容的な態度で優しく接し、決して裁かないことを心がけている。相談が終わった時には、少しでも心を開いて笑顔になってほしいと願っている。

子供が不登校になるきっかけには、家族の様々な問題が要因になっていることも多く、そんな時は、どうしても保護者を裁くような気がして、反省することが多かった。

しかし、私にとって教育相談は試行錯誤の連続であり、内容によっては戸惑うことも多い。そんな折、『愛は裁かず』という著書に出合った。著書は、長く教育界に携わりカウンセラーとしても活躍された方である。一つ一つの事例に、子供たちの心理的な問題を深いところまで捉え、豊かな愛で包み込むことが問題解決の糸口であることを示唆している。まさしく『愛は裁かず』という題名そのものの内容であり、感銘を受けるとともに、今までの自分自身を省みることができた。今後の相談への道が開かれたような気がした。

「ゆるす」という愛で治療してから教育を行う。この一節が強く印象に残った。家庭内の様々な問題を責めて、裁くような心をもたず日々「ゆるす愛」を忘れずに、これからも笑顔で教育相談を行っていきたい。

 

本の名称:愛は裁かず

著者名:伊藤重平

発行所:黎明書房

発行年:一九九七年七月二十一日

本コード:ISBN 四-六五四-〇二〇三八-一

 

 

 


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