教育福島0210号(1998年(H10)04月)-011page
二 基礎学力向上を図る学習指導
IDプランの推進を通して
児童生徒一人一人の基礎学力の向上を図るためには、児童生徒の学習努力を促すだけでなく、まず教師自身が学習指導の改善・充実を目指すことが重要である。
各学校においては、自校の課題解決のために、教師一人一人が各教科のねらいを踏まえた効果的な指導とともに、学校の組織を挙げた計画的な実践が必要である。IDプラン推進に当たってはその趣旨を再確認し、各学校の実態に即して自校プランを改善し計画的な授業の充実を図ることが大切である。
1 IDプランの趣旨
各市町村教育委員会の積極的な支援のもとに、「小・中学校基礎学力向上推進事業」や「T・T方式モデル事業」の成果等を参考にしながら、各小・中学校が改善と開発を重ね、児童生徒の基礎学力向上を図る取組みを、県教育委員会が支援する。
この「IDプラン推進事業」のねらいは教師一人一人の日常的な実践及び学校としての教育実践を評価を通して絶えず見直し、指導方法等の工夫改善を図り、児童生徒一人一人の個性の伸長や基礎学力の向上を図るという学校本来の機能を高めることにある。従って、学力向上IDプランは、特別なことをするのではなく、教育課程の効果的な実践であり、日々の授業の充実を目指すことである。
2 各学校のIDプランの実践
(1) 自校プランの実践・改善
1) 学力向上全体プラン
各教師の教育活動と児童生徒の学習状況を基礎学力向上の視点からとらえ直し、継続すべき点及び改善すべき点等を明らかにしながら、全教師が共通実践する改善の方向性を具体的に示し、組織的に取り組むことが有効である。
2) 学力向上教科プラン
教科指導の実態を踏まえ、各学年の指導の方針や指導法改善の方策を明示した計画をもとに推進することが有効である。また、適宜、実践に評価・反省を加え、実効性のあるものに改善していくことが必要である。
(2) 基礎学力を高める学習指導
1) 基礎学力の明確化
教科の系統性や構造等を踏まえて基礎学力を明確にし、単元を見通した展開ができるように教材の研究を深める。
2) 指導過程の工夫改善
ア 前時までに身に付けた知識技能や学習方法の成果を十分活用し、教科のねらいに即した動機づけを重視する。
イ 学習課題を明確にして学習の方向性や方法、手順等を把握させ、見通しを持たせる。
ウ 一人学びの時間や場を設定して自分の考えを持ったり、表現したりするための学習活動を充実させる。
エ 小集団や一斉学習の中で、児童生徒の多様な見方や考え方を引き出し、互いの見方や考え方を比較・検討する学習活動を通して課題の解決を図らせる。
オ 学習を振り返る時間を確保し、効果的なまとめの活動や練習活動を取り入れ、学習の定着を図る。
(3) 個に応じた学習指導の充実
1) 児童生徒は個性豊かで、興味・関心や学習速度、学習スタイル等も様々である。そこで、一人一人の学習状況に対応し、コース別学習や課題別学習、習熟の程度に応じた学習など、一斉指導のなかでも学習の複線化を図ることが必要である。
2) T・T加配校ばかりでなくT・T方式を積極的に導入し、教師の特性を生かしながら児童生徒の多様な個性に応じるとともに、児童生徒一人一人のよさを複眼的に見つめていく必要がある。
(4) 多様な方法による評価
基礎学力を向上させるためには知識・理解等の認知面だけでなく情意面の評価も大切にし、児童生徒が興味関心や意欲を持って学習に取組む中で、基礎学力を身に付けられるよう工夫する必要がある。
また、学習活動の結果としての評価だけでなく、学習活動の過程における評価についても工夫し、効果的な支援を行うとともに、次の学習活動の工夫改善に生きるように、成果と課題を明らかにしていくことが大切である。