教育福島0211号(1998年(H10)06月)-039page
グラフ1 平成9年度来所相談における在籍校種別内訳
り、保護者や先生方が子供の行動の特性などにも注意を向けるようになったり、かかわりの手がかりを得ようとしているものと思われます。
(グラフ1)は来所相談における子供の在籍を校種別にまとめたものです。
小学校、中学校の在籍者が六〇%を占めています。
一般の小・中学校に在籍している「指導上配慮を必要とする子供たち」の相談ニーズが高まっていると考えられます。
三 相談事例から
A君が初めて、お母さんと当センターに来所したのは、小学校五年生の三学期でした。
お母さんの話では、学校生活の中で、「授業への集中力に欠ける、言動が粗暴である、あいさつができない」ということを担任から指摘を受けたということでした。家庭生活では、そのようなことに気づかなかったため、今までの養育にまちがいがあったのではないかと自分を責めてしまうことがあるということでした。
このようなケースは、表面的な子供の行動にばかり注目しがちですが、行動の原因となる状況や子供の特性などにも目を向ける必要があります。
以下のような手順で相談を進めました。
1) 学校、家庭における行動の相違の把握
↓
2) 行動観察や相談を通して多面的な情報の収集
↓
3) 子供の特性の把握
↓
4) 学校、家庭で配慮すべき点の明確化
ここでは「子供の行動をどう見るか」ということが何よりも大切になります。特に集中できなかったり、粗暴な言動が表れたりする学校で、直接かかわる先生方がどう見るかがポイントになりそうです。
相談を進める中で、以下のようなA君の行動の特性がわかりました。
○気持ちをことばで表現することが苦手。
○器械運動が不得手である。
○耳からの情報は利用できにくいが、目からの情報は取り入れやすい。
○社会科が好きである。
○ソフトボールには興味がある。
このように得られた情報を基に、継続的な相談の中で、母親、担任とともに気になる行動への見方を話し合いました。そしてA君の気持ちを受け止めながら家庭で次のようなかかわりをすることにしました。
◇…学校 ◎…家庭 ・…学校と家庭
◇指示よりも、A君の思いを受け止める
◇好きな教科での活躍場面を作る。
・メモや作文を通して、自分の気持ちを表現できるようにする。
・具体的な場面で、あいさつの言葉がけをする。
◎ソフトボールを通して父親とのかかわりを作るようにする。
気になる行動への対応は、子供の特性や気持ちの理解から始まります。子供を否定しないことが、心に寄り添う第一歩になります。
四 おわりに
六年生になってA君が「中学校への思い」という題で、作文を書きました。その作文を持って来所されたお母さんのうれしそうな顔が忘れられません。