教育福島0212号(1998年(H10)07月)-013page

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老人ホームを訪問した時、初めは「いやだな。私たちが何でこんなことをしなくちゃいけないの。」と思った。準備している時もそうだった。

−略−「今日は楽しかったよ。また来てね。」と泣いて手を振ってくれたお年よりを見て、とてもさみしくなった。そして、温かい気持ちが自然にあふれてきた。−略−私の心は少しずつ変わっていった。−略−学校の帰り道、見知らぬおばあさんと話しをしながらいっしょに帰った。

今の私の目標は、「どんなお年よりにも親切にすること。今までの自分と今の自分はぜんぜん違うと胸をはって言えるように、自分にできることを少しずつでも実行していきたい。

(五年 Y子の作文から)

 

低学年においては、動物とふれ合い植物を育てる中で、思いやりの心を育むために、『飼育・栽培活動』を位置付けた。

学年園・花壇の世話、飼育活動、一人一苗運動、岩小まつりなどを実施し、動植物を世話することを通して、学んだり感じたりしたことを表現するようにした。

岩小まつりは、例年、生活科の『お祭りしよう』の単元のねらいにそって全校生が協力する形で行われてきた。昨年度は、「サツマイモの一人一苗運動」への取り組みを題材に、その発表会を行ったが、特に低学年では、生活科との関連を図り、「ミニトマト」を取り上げ、気付きの中から、「他を思いやる表現(つぶやきや発表)」を意図的に取り上げるようにした。

 

きょうミニトマトをはたけの土の中にうめました。「いままでおいしいミニトマトを食べさせてくれてありがとう。とってもおいしかったよ。いままでどうもありがとう。」と言ってやさしくやさしく土にうめてあげました。

そのとき思いました。あんな小さなたねからこんな大きくなってとてもうれしかったことやかれて水をあげてももとのはっぱにはもどらなかったこと。

さようならミニトマトさん。

(二年 W子の作文から)

 

六 研究の成果と課題

(1) 意図的な体験活動を仕組むことで、子どもたちの思いやりの心を育てることができることが明らかになった。

1) 高学年では、お年寄りとのふれ合い活動を通して、子どもたちの心の中に温かい気持ちが見られるようになった。

2) 低学年では、飼育・栽培活動を通して、子どもたちは植物の成長を喜び、動植物を大切にしようとする態度や協力して活動しようとする姿を見せるようになった。

(2) 体験活動を通して得た思いを、道徳や各教科・特別活動の時間に結び付け、更に次への活動につなげていく総合単元的な道徳学習を意図的に計画していくことが必要である。

1) お年寄りとのふれ合いが道徳の時間に生かされ、話し合いを深めることができた。その後も、訪問を重ね、更にふれ合いを深めることにより、自然に声をかけたり、手を差し伸べたりするなど自主的に実践する姿が多くなってきた。

2) 動植物との関わりで育まれた豊かな心や道徳性を、道徳の時間において補充・深化・統合できるように、豊かな体験活動を位置付けた結果、生き生きとした飼育・栽培活動をするようになってきた。

 

岩小まつり

 

岩小まつり

 

(3) 道徳教育の核は道徳の時間であり、重要性を再認識した。

1) 道徳の時間の指導は独立したものでなく、それ以前の児童の体験活動を十分考慮すること、また、次の活動へ連続するものであると位置付けることが必要である。

2) 体験活動を道徳の授業にどのように取り入れ子どもの考えを深めていくか、その方法を工夫していくことが必要である。

 

 

 


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